お好み焼き屋とかき氷

安藤は夏が苦手である。暑いのが大嫌いなのである。暑いさなかに熱いもの
 を食べるというのも難儀なので、冬にはあれほど恋しかったはずの、熱々の
 うどんや湯気のたつラーメンとは疎遠になってしまいがちである。

 いや、なに、うどん屋さんやラーメン屋さんでは、ざるうどんとか冷やし中
 華という手があるからよい。困ってしまうのが、お好み焼きだ。お好み焼き
 には、「お好み焼き冷製」なんてないぞ。暑いときに熱いものを熱い鉄板の
 上で食べようというのだから、正気の沙汰ではない。安藤がひいきにしてい
 るお好み焼き屋など、小さな冷房機はあるものの、戸を全部開け放ってある
 ので全く用をなしていない。真夏の炎天下のお昼にこれをやると、食べ終わ
 るころには倒れそうになる。だからといって夏だけは冷房ガンガンのお店に
 行き、お皿で食べるなんてことは鉄板マニアの沽券に関わる。

 ふと、子供のころを思い出した。母の仕事の都合で、学校給食のない土日の
 お昼はいつもお好み焼きだったな。コンビニや弁当屋なんてなかったので、
 子供が一人で気軽に食事できるところといえば、近所の顔なじみのお好み焼
 き屋さんくらいしかなかったのである。

 夏のお好み焼き屋さんでの最大の楽しみは、お好み焼きを食べ終えたあとの
 かき氷であったなぁ。製氷屋がつくった、透き通った分厚い氷を冷凍庫から
 取り出し、手動の(今にして思えばレトロな)かき氷機でかき削る。目の前
 でみるみるうちにやわらかな氷の塔がととのえられる。吊したガラス容器か
 ら、点滴のようにのびたチューブ。その先のコックをゆるめ、氷蜜をかけて
 くれるおばちゃん。みぞれにしようか、イチゴにしようか。それとも今日は
 気張ってミルクもかけようか。熱いお好み焼きでほてっていたはずなのに、
 すぐにこめかみがキーン。

 ある時、おばちゃんの店の手動のかき氷機が電動のものに。

 「おばちゃん、もう、ええ年だから、肩が痛うてねぇ。かき氷止めようかと
 思ったけど、あんたがたの楽しみを取っちゃいけん思うてね。新しいのこう
 たよ。古い機械もよう働いてくれたねぇ」

 夏のお好み焼き屋さんといえば、かき氷がつきものだったのに。今ではあま
 り見ない風景?


 安藤トロワー@兼業主夫(本業主夫、副業会社員)