てんやわんや

 広島市中区小町3-5 TEL:082-246-3018 11:30-23:00 日休
  昼定食セット11.30-13.00(豚玉定食650円、焼きそば定食650円、
  日替り定食600円、そば肉玉+ウーロン茶650円)、豚玉焼き600円、
  フルーツ焼き800円、ミラクル焼き1,000円、そば肉玉650円、
  イカ天+50円、W900円、てんやわんやスペシャル1,000円

 建物の二階にある非常に判りにくい店だ。基本的には関西スタイルのお好み
 焼きを出す店だが、客の需要に合わせて広島スタイルのお好み焼きも提供して
 いる。僕はどちらを食べようかと悩んだが、やはり広島スタイルのお好み焼き
 を選んだ。
 
 この店の最大の特徴は、ソースが既製品ではなく自家製オリジナルソースだと
 いうこと。ときどき、ソースのオリジナル性を主張する店があるけれど、それ
 は味を直したり、複数の製品を混ぜているだけのことが多い。しかし、この店
 では、最初から全て手作りだというのだから畏れ入る。もしかしたら、広島県
 内唯一かもしれない。
 
 作り方はまず、野菜のパートとして、生地、魚粉、キャベツ、イカ天、キャベツ、
 天カス、モヤシ、魚粉、バラ肉の順に積み、ひっくり返す。僕はたまたまイカ
 天入りを頼んだので、イカ天がプラスされているが、キャベツとキャベツの間
 にイカ天を入れる店は初めて出会った。キャベツの量は多く、魚粉もやや多め。
 ひっくり返した後は決して押さえず、そのままじっくりと熱を通す。麺は蒸し
 麺を使い、袋から出して油を振り、鉄板に広げてじっくり焼く。その後、オリ
 ジナルソースで麺に下味を付ける。
 
 最近は、麺に下味をつける店は少なくなったので珍しい焼き方だと思う。さら
 に、野菜と一体化させる前に、円盤状に整形した麺の上からオタフクソースを
 かけるのだが、僕はそれをパスしてもらった。出来あがりの上からもソースを
 塗るのだから、いくらなんでもソースの使い過ぎだと感じたのだ。麺と野菜を
 一体化した後、麺の側に潰した玉子を張り付け、オタフクソースを塗り、青ネギ、
 青海苔、白胡麻を散らして出来あがり。なぜか最後にオタフクソースを塗るの
 だが、せっかくオリジナルのソースを作っているのだから、僕は最後もオリジ
 ナルでお願いした。
 
 目の前で焼かれるお好み焼きという料理だからこそ、正に「お好み」にアレンジ
 してもらえるのだ。肝心のソースは、通常よりもさらりとしていて、フルーティ
 で酸味と甘味のバランスが良い。お好みソースのくどさがほとんどなく、味が
 澄んですっきりしていた。この味ならば、麺と上からの両方に使ってちょうど
 良いくらいだと感じた。訊くとカリフォルニアにプルーンの木を2本持っていて、
 そのジュースをたっぷり使っているのだとか。言われてみると、確かにプルーン
 の甘さと爽やかさが感じられる。そして、何よりもスパイスの使い方が良い。
 適度にスパイシーで、甘さがすっきりしており、味のバランスが市販品に負けて
 いない。単に手作りにしただけではなく、完成度が高いことにも驚かされた。
 
 その他の特徴としては、キャベツの量が非常に多く、お好み焼きに高さがあるの
 で、ちょっと食べにくいこと。それにしてもキャベツの多さは魅力的で、他店の
 1.2倍くらい使われている。生地はかなり厚めで、ぼってりしているが、これは
 関西スタイルとの共用なのかもしれない。そして、何よりも手際が悪いので形
 が崩れてしまっているのが難だ。この店の最大の問題はそこにあり、段取りが
 悪く、まさに「てんやわんや」なこと。
 
 本来、関西スタイルのお好み焼きが専門だからか、広島のお好み焼き独特の手順
 の複雑さにまだ慣れていないようだ。最初、鉄板に置いてしまえば、あとはひっ
 くり返すだけの関西スタイルと異なり、広島のお好み焼きは、素材ごとに熱を通
 すことが特徴なので、完成までの手順が複雑になる。ましてや、時間差で複数の
 お好み焼きを焼いていると、どれをどのくらい焼いたのか判らなくなる。繁盛店
 の店主はそれを確実にこなしており、それこそが職人芸の一つなのだが、この店
 ではその状態にほど遠い。目の前でお好み焼きを一枚焼いているときに、僕が注
 文したのだが、なぜ注文を受けて直ちに生地をひかないのか?と訝っていると、
 目の前の一枚が完成してから、おもむろに僕の一枚にとりかかった。これでは注
 文が錯綜すると、レースにならないと思うし、5〜6枚の注文が時間差で入れば、
 提供に1時間以上かかってしまうだろう。今の状況では、とてもじゃないけれど、
 時間が限られているときに訪れることはできない。お好み焼きは非常に気に入っ
 たので、すぐにでも再訪したいが、昼は二の足を踏んでしまう。常に時間に追わ
 れているサラリーマンが仕事の感覚をそのまま持ち込むと、イライラしてしまう
 可能性が高い。
 
 ただし、お好み焼きは非常に旨いので、夜にのんびり訪れるのがベストだと思う。
 幸いにも、鉄板焼きが数多く揃っており、酒のアテには困らない。サービスはア
 ットホームで非常に良く、おしぼりを出してくれるなど、心配りが細やかなのだが、
 そのため余計にのんびりしている感は否めない。

 判りにくい場所にありながら、待望のオリジナルソースで勝負しており、僕とし
 ては大いに応援したいのだが、まずは広島のお好み焼き店としての基本的なスピ
 ードを身に付けてほしいと切に願う。この味を求めていた人は大勢いるはずなの
 で、それさえできれば必ず繁盛店になるはずだ。 (03.06)