とりきん佐藤

    広島県広島市中区薬研堀4-8-1 TEL:082-247-8039 18:00-1:30 日休
   地鶏もも945円、地鶏もも骨付き1,890円、牛タン1,050円、カレー鍋1,470円、
   特選カレー鍋2,100円、地鶏つくね210円、地鶏砂ずり157円、地鶏皮157円、
   ねぎま210円、せせり210円、地鶏たたき735円、水餃子630円、海賊おにぎり420円、
   鶏スープお茶漬け525円、キムチ315円

 歓楽街の中だが、妙に入り組んだ場所にある店だ。建物の名前は「娯楽センター」
 というらしい。店主は長く、広島東洋カープのバッティングピッチャーを勤めた方
 とのことで、この店の鶏は日向地鶏。カープファンなら知らない人はいないだろう
 が、カープのキャンプ地は宮崎県の日南市なのだ。
 
 店に入るなり驚いたのは、カレーの臭いが強く感じられたこと。焼鳥店でなぜカレ
 ーが?と思うと、店の名物の一つがカレー鍋らしく、ほとんどの客が食べていたの
 だ。しかし、気持ち的には焼鳥だったので、僕はまず焼鳥から。スタッフも「ウチ
 の一番のウリは、カレー鍋じゃなくて、このもも肉ですよ」と言う。一枚ではなさ
 そうなので、945円はちょっと高いな、と思いつつ頼んだが、割と量はあった。
 もも肉を炭火で焼き、塩で味付けしただけだが、炭の香ばしさがプラスされ、ガス
 の妙な臭いが付いておらず旨い。いわゆるゴテ焼きだ。しかし、僕には少し塩が薄
 めのような気がした。特に濃い塩が好みではないが、この料理には思い切って塩を
 振ったほうが旨いと思う。よって、僕は卓上の塩を追加して食べた。肉はしばらく
 噛み締め続けるほど硬め。この手の肉は、ぐいぐい噛んでいると、肉汁が染み出て
 くるはずだが、思ったよりも味が弱い。おかしいなと思いつつ、最後まで食べさせ
 てしまうくらいは旨かった。んー、何というか、ホームフリージングしたときのよ
 うな肉汁の涸れ方だな。骨付きならもっと旨いのだろうが、そちらはさらに高いの
 で諦めた。
 
 串は皮、つくね、肝を頼んだ。一本から頼めるのは嬉しいが、その一本のポーショ
 ンが小さいのは難。皮は時間をかけて焼いてくれ、水分が抜けてパリッと旨いのだ
 が、ちょっと小さ過ぎ。肝も砂肝か?と思うほど、少なめに刺してあった。しかし、
 この肝は臭みが全くなく、熱のとおり具合も適切で、非常に旨い肝だった。これで、
 量に応じて値段が安いのであれば納得するのだが。つくねはしっかり練った肉を一
 旦茹でて、それを串に刺したものだ。タレではなく、塩焼きにするところが珍しく、
 しかもしっかりめに焼いてあった。鶏の味という面ではもう一つだが、甘いタレを
 まぶすのではなく、さっぱりした鶏を熱々にして、塩で食べさせるのは面白い提案
 だと思う。なお、鶏を頼むと、大きく切ったキャベツと胡瓜を出してくれる。デフ
 ォルトでは味が付いていないので、卓上のポン酢っぽい調味料をかけるとよいだろ
 う。
 
 この時点で、カレー鍋への誘惑が断ち切れなくなり、一人前でお願いしてしまった。
 普通のカレー鍋と、特選カレー鍋があり、どう違うのか尋ねたところ、どちらにも
 豚肉と和牛肉が入るけれど、特選は普通の和牛肉が、霜降り和牛肉になるとのこと。
 僕はカレー味にするのであれば、霜降り和牛にはそれほど興味はないので、通常の
 カレー鍋にした。運ばれてきた鍋には、さらりとしたカレーツユの中に、白菜、モ
 ヤシ、油揚げ、ニラ、椎茸、えのき茸、玉ねぎ、豚肉、牛肉が入っている。
 
 家庭用のカレールーを使ったざらざらした舌触りの、もったりしたカレー味とは少
 し異なる。最も違うのはダシの味が判別できないことで、鶏なのか、昆布なのか、
 とにかく様々なダシが入っているようで、判断できなかった。店主に尋ねると「特
 別な材料は使っていないのですが、どのダシをどれくらい使うのかは秘密なんです。
 他の従業員にも教えていないんですから」とのことだった。そこまで秘密主義にし
 なくても・・・とも思ったが。
 
 感心したのは、地鶏の後にカレー味の鍋というのは非常に合うということ。最初に
 肉を食べ、後から野菜をたっぷり食べるという組み立てもいい。焼鳥の後は、かな
 りしっかりした味でなければ、バランス的に負けてしまうものだけど、カレー味な
 ら力負けしない。しかも、野菜が旨く食べられるのだから、さらに嬉しい。地鶏の
 味プラス、この鶏とカレー鍋の連携プレーに星3つとした。ほとんどの客が、鶏の
 後、鍋で〆ていることからも、好相性は多くの人が感じているのではないか。
 また、一人前から頼めるのが嬉しい。鍋は大人数で、という思い込みがあるためか、
 一人では出してもらえないことが多いけれど、素材に対する熱の通り具合などを考
 慮した場合は、一人鍋のほうが確実に旨いと思う。
 
 〆にはスープとの馴染みを重視してか、中華麺を頼む人が多かったけれど、僕はご
 飯をお願いした。カレーとご飯の相性は良いに決まっているのだ。薬味として切り
 海苔と青ネギをもらい、ちょっと柔らかめに煮込んで出来あがり。そのまま食べて
 も旨かったが、唐辛子の粉を振って食べると、酒の〆としてはちょうど良かった。
 
 これだけ飲んで食べて、一人で5,600円と決して安くはないけれど、僕は焼鳥に
 カレー鍋を合わせたところを高く評価したい。焼鳥店の良いところは、一人でも気
 兼ねなく食べられるところだが、野菜が不足する上、店によっては一本づつ頼めな
 いところもある。その点でもこの店は優れていると思う。一人でも僕のように、
 焼鳥→鍋と楽しめ、一店で栄養バランスよく、〆まで堪能できるのだ。
 
 最後は店主が店の外まで見送ってくれ、二軒目の誘惑に駆られることなく、
 温かい気持ちで帰路につくことができた。 (04.03)