はな

 広島県因島市中庄町仁井屋区3110-2 TEL:0845-24-2327
  11:30-14:30(日祝-17.00) 17:00-19:00(予約のみ) 水,第1・3火休 P有
  
  もり700円、おろし900円、かけ700円、焼味噌300円、蕎麦掻き600円、
  玉子焼き600円、蕎麦豆腐300円、だったん蕎麦アイス250円

 因島市の住宅街の中、すごく判り難い場所にある店だ。いや、店構えは全然、
 店舗じゃなくて、ごく普通の民家の玄関に暖簾がかかっているだけ。遠目から
 だと視界に入っても判らないかもしれない。
 目印は「成願寺」という寺院で、その西側に店がある。土地勘がない人は、し
 っかりと地図で確認して訪れなければ、まず辿り着けないと思う。僕は、店に
 来る前に、地元タウン誌で情報を入手したのだが、その記事の写真に、延ばし
 た蕎麦を延し棒に巻きつけ、縦にして厚さの均一さを確認している姿が写って
 いた。
 これは、高橋邦弘さんの流儀なので、おそらく流れを汲んでいるんだろうなと
 思ったら、案の定、店内には「達磨」関連の品が散見された。

 蕎麦切りはもり、かけ、おろしの三品だけで、他には酒の肴やデザートが用意
 されている。僕と連れは二人とももりをお願いした。
 蕎麦は案の定、二八。でも、高橋さんの蕎麦とは少々異なり、やや加水が少な
 いという印象を受けた。表面感覚もややざらついているし、エッジも少し固め
 に立っている。どちらかといえば「ひろしま翁」に近い蕎麦だった。同じ流れ
 を汲んでいても、打ち手が違うとこれほどまでに味が違うのだから面白い。
 こういう微妙で高いレベルの食べ比べができるのは、現在の広島県ならではな
 ので、大いに楽しみたいところだ。

 民家の蕎麦店と言えど、石臼を使った自家製粉を行っており、志は高い。蕎麦
 の香りはしっかりと出ており、情報では常陸秋蕎麦とのこと。これは「為楽庵」
 「はづき」などと同じ。最近、県内の蕎麦店で常陸秋蕎麦を使う店が増えてき
 たな。
 そして面白いのはツユで、鰹節と醤油だけで作ったのかと思うほど、甘さがな
 くて醤油の辛さがぎりりっと来るツユだった。これは「達磨」の味とは全く違
 う。この店独自のものだ。これが、ハードな噛み締め感のある蕎麦と相性良く、
 荒削りながら僕の琴線に触れた。元々、蕎麦なんてのはツユを付けないのが
 一番味が判るんだけど、口が旨いのと、味が判るのは別の話で、まず蕎麦の生
 の風味を堪能したら、残りはツユで食べるのが僕は好き。ただし、辛めのツユ
 に少し付けるのがやはり最良。そうしたときに、ダシばかり強くて薄いツユだ
 ったり、甘ったるくて少し付けただけでも蕎麦の風味が消えてしまうツユを出
 す店が多過ぎると思う。そういう意味において、粗野かもしれないが、こうい
 う蕎麦ツユを僕は高く評価したいのだ。
 薬味は白ネギ、ワサビ、辛味大根とスタンダード。食後にはきっちり蕎麦湯も
 出してくれた。濃度は薄いが味はしっかりしている旨い蕎麦湯だった。

 場所が場所だけに、客は僕たち以外におらず、なんだか人の家に上がりこんで
 食事しているような気分になる。実際、ご夫婦が普通に生活しておられる住宅
 なので、飲食店というパブリックスペースと、住宅というプライベートスペー
 スの境目が不明瞭で、どうもその辺りのもどかしさというか、居心地の悪さは
 如何ともし難いものがあった。途中、店主が中から出てこられたが、客に話を
 するというよりも、会社の若いもんに話をするような感じで、こちらが逆に戸
 惑ってしまった。たぶん、脱サラされる前は、部下がたくさんいる地位の方だ
 ったのだろう。
 蕎麦だけを評すれば星3つで、サービスを含めたトータルでは星2つかと思いつ
 つも、ぎりぎり星3つ。味だけで言えば、県東部でトップクラスと思うので、
 ここから大化けされることを期待したい。 (05.06)