くべ三(ふくべさん)【蕎麦】

http://hamanet.jp/kaishoku/detail.aspx?txtKshopcd=1580

 広島県広島市西区横川1-6-6 TEL:082-232-8971 禁煙
  11:30-14:30 18:00-21:00 火水休

 ざる750円、辛味おろし900円、自然薯とろざる1,050円、胡桃ざる1,300円、
 鴨丸ざる1,300円、かけ750円、花巻き900円、自然薯とろろ1,050円、
 朧昆布1,150円、鰊1,300円、鴨丸1,300円、ばら寿司300円、蕎麦がき750円、
 手挽き蕎麦がき950円、蕎麦がき煮込み1,300円、蕎麦味噌焼き350円、
 野菜味噌350円、朧豆腐500円、漬物500円、ジャコおろし500円、
 古式板わさ650円、ワサビ芋650円、玉子焼き700円、鰊捧750円、
 ビール(小瓶)430円、日本酒650円、
 昼のコース(前日までの要予約)2,300円、夜のコース(前日までの要予約)3,700円

 広島県内でも珍しい、生粉打ちだけで勝負している店だ。しかも店主が20代の女性と
 いうのだから、さらに驚く。
 オープン早々から何度か訪れたが、だんだん蕎麦がこの店らしく、店主の個性が出て
 きたようなので、夜に訪れてみることにした。

 ここは、夜は夜で酒の肴をしっかり揃えているため、蕎麦前を楽しむことができるの
 だ。まずは定番の蕎麦味噌、あとは酒肴五点盛り、季節の野菜香り盛りをもらった。
 蕎麦味噌はやや甘めに仕上げ、中に白ネギを入れて練ってあるのかな?蕎麦の実はそ
 れほどたくさん入ってはいなかった。ちゃんと杓文字に塗って炙ってあったが、炙り
 具合が均一ではなかったので、僕としてはもう少しじっくり炙ってほしかった。酒肴
 五点盛りは、莫久来(ホヤとコノワタの塩辛)、イカのワタ和え、トビウオの卵を唐辛
 子味噌か何かに漬けたもの、ワタ入りスルメ、イカの内臓か何かの塩辛という内容
 だった。イカが多いように思えるが、味が全然違うので、食べ飽きるということはな
 かった。中でもワタを残したままのスルメは出色の旨さだった。小さなイカだから出
 来ることだろうが、生臭味はほとんどなく、味が濃厚でコクがある。これだけでいく
 らでも酒が飲めそうだ。莫久来は酒のアテとして王道だし、これが置いてあるのは、
 やはり「なわない」の親父が一枚かんでいるだけのことはある。
 
 野菜は小松菜のお浸し、こんにゃくの刺身、蕪の膾だったが、どれも惣菜のレベルを
 超えそうに旨かった。小松菜は味付けも良いが、野菜そのものが良いのだと思う。
 こういう小松菜はスーパーになかなか売っていない。蕪もそうだ。正月前ということ
 もあり、仕込んだものだろうが、蕪のガラス細工のような、ぱりっとした触感と、
 爽やかな風味が素晴らしい。小さなことだけど、実にきらりと光る一品だった。
 
 また、こんにゃくも驚くほど旨い。これは県北で作られているタイプのこんにゃく
 だが、これほど旨いこんにゃくを作れる人は、実はそれほど多くない。僕は県北に
 行くと、必ずと言って良いほど買って帰るが、この店のこんにゃくは、最高レベル
 に上出来だと感じた。
 
 続いて出汁巻き玉子と天ぷら。出汁巻き玉子は、焦げ目なくたっぷりのダシを含ん
 で焼き上げてあり、熱々なのが嬉しかった。この玉子も腰が強く、味が濃かったの
 で、やはり素材が違うのではないだろうか。天ぷらはカラリと固めの衣に仕上げて
 ある。素材と衣がやや分離気味なのが残念だが、凡百の天ぷらよりは遥かに旨い。
 また、揚げ油に良い油を使っているようだ。これはもしかして太白か。
 
 続いてざるをもらう前に蕎麦掻きを食べることにした。この店の蕎麦掻きはどんな
 ものを出すのか興味があったのだ。果たして、おはぎ状に丸められた蕎麦の団子が、
 湯の中に浮かんで供された。ここの蕎麦掻きは、湯で掻くのではなく、茹で上げる
 タイプだったのだ。一見、ねっちょりしていそうだが、箸で切って口に入れると、
 蕎麦の粒子が粗いためか、さらりとほぐれる。これはこれでなかなか旨い蕎麦掻き
 だと感じた。どちらが好きかと問われれば、湯で掻いたものだけど。
 
 さて、〆はやはりざるをお願いした。ざるの上に細い蕎麦がきっちり敷かれ、佇ま
 いは清楚な印象。切りの技術が向上したようで、以前のように短く切れてはいなか
 った。生粉でこれほど細く打つとは大したものだ。口に入れると噛み締めはあまり
 強くなく、さらっと咽喉に落ちて行く、非常に咽喉越しの良い蕎麦だった。持ち上
 げた蕎麦の間に、空気がたっぷり含まれていて、それに乗っかるようにふわりと
 咽喉へ直進する。600円という安価で、量はむしろ他店より多いくらいなのに、
 するするとヤケに軽く食べてしまった。その理由は、細切りというだけでなく、
 茹でた後の〆にもあると思う。それほど冷たい氷水で冷やしていないのではないか。
 そのため、きゅっとしたコシは生まれないが、ふわんとしたしなやかさが残る。
 僕はこれ、結構好きだな。コアな蕎麦好きは、もっときゅきゅっと締めた蕎麦が
 好きなものかもしれないが、こういう蕎麦にも独特の良さがある。ただし、へたる
 のはかなり早いから、出てきたらおしゃべりなんかせずに、すぐに食べてしまおう。
 薬味は白ネギ、大根おろし、わさび。ツユは以前はもっと鰹節がぶわっと効いてい
 て、僕はそれはそれでオリジナリティがあって好きだったのだが、現在はちょっと生
 醤油が勝ち過ぎ。辛くなったけれど、生醤油の角が取れていない印象だ。甘ったるい
 よりは、蕎麦の味を生かすから随分良いけれど、もう少し試行錯誤を繰り返してほし
 いな。
 
 なお、連れは花巻を食べたが、今時、花巻なんて粋な種物を置くところがこの店の
 格好いいところだ。蓋を開けると、海苔の良い香りがして、ツユと海苔の相性が
 素晴らしい。ただし、面白いことにかけのほうは「饕餮庵」のように、口の中で解け
 るような、蕎麦の霞状態ではない。もう少ししっかりと形を保つのだが、どうしてそ
 うなるのか、僕にはちょっと判らなかった。総じて、酒も安く、肴も安く、蕎麦も安
 い。さらにそれぞれが標準を遥かに超えているのだから、これはもう、広島市内中心
 部では、現在のところ、ナンバーワンの蕎麦だと思う。さらに、店主の笑顔は、若い
 男性なら一発で惚れそうなくらいだし、お母様らしき女性の対応も上品だ。全ての面
 において抜きん出ており、星4つかと悩みつつ、今回は星3つとする。
 
 料理の品揃えにおいても、蕎麦切りの技術においても、ツユの組み立てにおいても、
 試行錯誤の部分が散見されるので、もう少し、この店らしさが確立されるのを見守り
 たい。また、この店では河内町宇山産の在来種の蕎麦を使い、毎日、石臼で挽いてい
 るとのこと。河内町に在来種の蕎麦があったとは知らなかったな。これはちょっと調
 べてみたい。そのため、新蕎麦の時期は他店に比べて遅くなるのは否めない。
 たぶん12月に入ってからの提供だと思う。蕎麦打ちは、東京の「生粉打ち亭」で修業
 されたそうだが、現在は独自の路線を歩みつつあるように感じられた。何はともあれ、
 広島の蕎麦好きなら、必食の一店であることは間違いないだろう。(03.12)

 4月9日の昼で一旦休業し、10月中旬を目処に再開するとの情報を得て再訪した。

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