三八のぶ  改めタッグ

  広島県廿日市市佐方4-7-27 TEL:0829-31-1937 11:00-20:00 水曜日休

 そば肉玉(レギュラー)550円、そば肉玉(レディース)450円、Wサイズ700円、
 ミックス肉玉700円、そば抜き500円、焼そば550円W700円、マヨネーズ30円、
 豚肉50円、玉子50円、チーズ70円、餅70円、イカ天70円

 五日市から廿日市に向かう途中の裏通り、旧街道になるのかな?その通り沿いに
 ある小さな店だ。日除けに「三八のぶ」と書いてあるので、これは東雲の「三八」
 出身者に違いないと思い、以前から気になっていた。訪れてメニューを見ると、
 レディースと書かれたお好み焼きがあるではないか。これはもう間違いない。
 「三八」の直系だろう。ということはボリュームがあるに違いないので、シンプル
 にそば肉玉をお願いした。
 すると「コチュジャンと、ガーリックはどうされますか?」と聞かれた。
 え?何だそれ?ガーリックはときどき聞かれるけれど、コチュジャンってのは珍
 しいなと思って訊いてみると、麺にコチュジャンを塗して焼くもので、人気があ
 るとのこと。見ていると、常連らしき人たちがコチュジャン入りを頼んでいたの
 で、僕もお願いすることにした。
 
 焼き方は修業元を踏襲しつつも、やや違う部分もある。鉄板には決して油を引か
 ず、まず生地を延ばし、その上に魚粉、続いて山盛のキャベツ、昆布粉(?)、
 天カス、モヤシ少々、豚バラ肉3枚で繋ぎの生地を少し落として引っくり返す。
 この時点では、おっ、修業元とは違い、スタンダードスタイルで仕上げるのか、
 それは楽しみだな、と思っていた。麺は蒸し麺を使い、天カスを混ぜながら、
 ソースで和えて下味を付ける。そしてさらに、コチュジャン風味にした客には、
 麺に水で軽く溶いたようなコチュジャンを加えてくれる。
 そして、麺の上に野菜をのせるのかな?と思っていたら、野菜のパートの一番上
 にある、生地の部分をぺろりと剥がし、そこへ麺をのせ、上から元通りに生地を
 のせたのだった。結局、この作業により、スタンダードスタイルから、オールド
 スタイルに逆戻りになったと言える。
 
 それにしても面白い焼き方だ。始めて見るな。麺を生地と野菜の間に挟んだ後は、
 上から重しをのせてぐいぐい潰す。キャベツが多いので、盛大にはみ出すが、お
 構いなし。そうやって焼いた後、コテで整形して、肉の側に潰した玉子を張り付
 けて出来上がり。
 
 ちなみに、ここはニ黄卵ではなかった。味付けはミツワソースで、好みでガー
 リックパウダー、青海苔、白胡麻、化学調味料(?)の混ざった薬味を振り、仕上
 げにデフォルトで青ネギをかけて出来上がり。蒸し麺を使い、ぐいぐい押し潰し
 て焼くため、麺と野菜に一体感があるというか、麺はふにゃりと主張なく、全体
 がふんわりホコホコした状態になっている。そこへコチュジャンの軽い辛さと、
 ガーリックの風味が香る。
 
 「三八」ほどB級感はないけれど、ボリューム感はむしろこちらのほうが上では
 ないか。特に麺がきっちり1玉分で、キャベツの量は負けじと多いので、結果と
 して「三八」を上回るのではないかと感じた。また、特に(これは「三八」でも
 同じだが)、Wというのは他店の麺Wとは意味が違う。麺は当然2玉だが、キャベツ
 も増量される上、玉子を2つ使うのだ。目の前で作られているのを見たけれど、
 本当にすごい量だった。端的に言えば、持ち帰り用のパック一つでは入り切ら
 ず、半分ずつ、二つに分けて入れなければならないほど。
 僕が思わず、昼飯用と晩飯用に分けて食べればいいねと言うと
 「二人で来て、Wを一枚食べる人もいるわよ」とのこと。いや、それはマナーと
 してやっちゃダメでしょ、客単価350円じゃない、そんな馬鹿な話はないよと言
 うと「数字のことはあまり考えないのよ。考えたら切なくなるし、そんなこと
 考えてたら、キャベツや天カスの量だって自然に減っちゃうでしょ?」と笑う。
 うーむ、持ち帰りならOKと思うが、店で食べるのにWを二人でというのは、僕は
 やはり客としてNGと思うな。これを読んでから訪れる人がいたら、そんなことは
 しないでほしい。どうしてもやりたければ、持ち帰りなさい。油を使わずに焼い
 てあるから、冷めても味が変わりにくいことだし。
 
 その他には酒類まで持ち込みというから驚き。夜20時までなので、そんなに飲む
 客はいないだろうと思いきや、意外にいるとのこと。しかも、長っ尻の客もいる
 らしいが、人の親切を仇で返すようなことは、人としてやっちゃダメだろう。
 せいぜい、1〜2本でシュッと席を立つのが礼儀というもんだ。何はともあれ、
 客の要望はできるだけ叶えてあげたいと考えているようなおばちゃんだった。
 
 ご自身は「商売が下手なだけよ」と笑うが、こういう人が、広島のお好み焼き
 文化を支えているのだ。
 僕が帰ろうとした入れ違いに、近所の高校生らしき女の子達が店に入ってきた。
 雨が降っていたので、鞄が濡れたのだろう、礼儀正しく膝の上に置彼女たちに
 対し「鞄は空いとる椅子の上におきんちゃい、もう一つのテーブルの上でも構
 わんけぇ、遠慮しんさんな」と優しく声をかけていた。学生がお好み焼きを食
 べなくなったと言われるが、こういうおばちゃんの居る店にはちゃんと来てい
 るのだと思い、僕はとても温かな気持ちで店をあとにした。 (05.05)