三次魚販

 三次市粟屋町2888-16 TEL:0824-64-2442 17:00-23:00 日休 P有
 
 鮎セット2,100円、鮎塩焼き大1,050円中840円小630円、開き鮎420円、
 鮎うるか315円、鮎刺身735円、ギギュウ420円、小鉢315円、
 味噌汁(鮎orギギュウ)315円、鮎セット2,100円
 三次市の祝橋西詰にある店だ。場所的にはJR三次駅から三江線で次の駅、尾関山駅
 の川向になる。三次駅からだと距離がある上、国道54号線からすぐなので、酒を飲
 まないなら車で訪れるほうが便利だろう。
 
 この店の特徴は、川魚専門店であること。日替りで、普通の居酒屋っぽい料理も揃
 えているが、グランドメニューは川魚、特に鮎がメインとなっている。他には郷土
 料理であるギギュウの料理や、季節等に応じて、鰻、鯉、ハヤ、すっぽんなどの料
 理もできるのだとか。そして、ここが重要なのだが、これらの素材は全て、目の前
 を流れる江の川水系の川魚漁師(かわうおりょうし)の手により捕られた天然ものと
 いうことだ。
 
 そのため、仕入れに応じて提供できる品が変わる。いくら望んでも、献立に書いて
 あるじゃないかと怒っても、相手が自然なので、ないものはないのだ。ただし、看
 板の鮎だけは水揚げ後、すぐに遠洋漁業等で使う瞬間冷凍機を使って冷凍しており、
 通年提供できるよう心掛けているという。それでも不作の年は売り切れたりしてし
 まうことがあるようだ。そんなときでも店主は、天然物以外は使わないと断言した。
 確かに、漁師がこの店に天然物を卸してくれている以上、養殖物を使うと彼らの顔
 を潰すことになるのだろう。その矜持からか、店内には鮎を捕るための漁具が展示
 されているくらいなのだ。
 
 料理は、酒を飲むなら単品で頼むこともできるだろうが、酒なしだと僕のお勧めは
 鮎セット。塩焼き、開き鮎、うるか、味噌汁、小鉢、ご飯、漬物で2,100円という
 セット料理だ。運ばれて来て最初に驚いたのは、塩焼きの鮎の焼き加減がレアであ
 ること。しかも、ちゃんと内臓が付いたまま、レアに焼いてある。これは軽い驚き
 だったな。刺身でも食べられる鮎を使っているため、レアでも大丈夫なのだろうが、
 背骨付近でぎりぎり熱が通っているレベル。間違えた訳じゃないよね?という確認
 を含めて、興味深い焼き加減ですねと感想を述べると、ちょっとでも焼き過ぎると
 干からびちゃうでしょとの答えだった。

 そうか、確かにしっかりと焼かれた鮎は水分が抜け、香りも失われていることが多

 い。しかしこの鮎からはしっかりと鮎の香りがして、食べると間違いなくこちらの
 ほうが旨いのだった。身がしっとりして鮎独特の、ごく薄い川魚の香りに加え、胡
 瓜のような若いスイカのような爽やかさがある。僕は鮎が大好きなので、鮎の塩焼
 きなら、ビールと共に三匹でも四匹でも食べたいのが普通だが、この鮎は大きくな
 いにも関わらず一匹で満足した。味がしっかりしているので、満足感が高かったの

 だろう。開き鮎は逆に、鮎を開いて干し、じっくりと骨まで食べられるように焼い
 てある。特に頭の部分はしっかりと焼いてあるので、頭からばりばり食べられる一
 品だ。これは旨いけれどご飯と食べるのは辛かったな。ビールの肴としては最高だ
 ろう。
 
 また、妙にへんに甘いタレ焼きにしていないところが好ましかった。やはり鮎はシ
 ンプルなほうが香りが消されず旨いと思う。そして、驚くほど旨かったのが鮎の味
 噌汁。味噌汁の中に小さめの鮎が一匹、姿のまま入っているのだ。薄い味噌で煮ら
 れた格好の鮎は、どんな味なのかと食べてみると、これが驚く旨さだった。鮎の薄
 い体臭というか、川魚の香りが煮ることで強調されているのだが、味噌と旨く融合
 して、とても良いマリアージュを起こしている。しかも、これは小さい鮎だから余
 計に旨いのではないかと感じた。
 
 味噌汁の具は鮎以外はニラ。これもまた面白い組合せだが意外と良く合った。狙っ
 たものか、季節だったので使ったのか、その辺りは判らないが。そして、このまま
 だとご飯が余りそうだなと思いつつ、うるかに箸を付けてびっくりした。苦塩っぱ
 い通常のうるかとは異なり、生臭さが少なく、山椒の香りに似た複雑な風味が感じ
 られ、ご飯と一緒に食べると堪えられない旨さだったのだ。いやはや、これは本当
 に旨い。ご飯の味もなかなかのものだったので、余計に旨さが増幅した格好だ。
 ちなみに小鉢はタケノコ、コンニャク、小芋、厚揚げ、結び昆布などを煮たものだ
 った。
 
 そして、僕は水を頼むのも悪いので、ウーロン茶を頼んで飲んでいたのだが、この
 ウーロン茶もなかなかの旨さだった。賀茂郡大和町の有限会社田治米鉱泉所という
 会社が作ったもので、僕は以前、ここの水は飲んだことがあり、旨いと思っていた
 のだが、ウーロン茶もこれだけ上質なものを作っていたとは思わなかった。ペット
 ボトルに入った苦渋いものではなく、風味を重視してガラス瓶に入っているのも良
 い。そして、それをこの店では一本210円で提供しているのだ。何だか嬉しくなって
 しまうではないか。
 
 さらに、小さなことだが、白菜の漬物もしっかり発酵した、広島市内ではほとんど
 食べることができない本物の漬物だった。うるかは買って帰りたいと思ったが、
 一瓶3,000円前後だったので、ちょっと手持ちがなく諦めた。
 うるかの値段としては破格だけど、僕はそれだけの価値があると思うな。店は基本
 的に品の良い年配の女性が一人で切り盛りしており、料理がテキパキと供されるタ
 イプではない。しかし、もてなしの心と料理に対する矜持が感じられ、とても気持
 ちの良い食事をすることができた。僕は見かけたことはないが、たぶんこの店は、
 時々漁師達が根城にしているのではないかと思う。そういうときに出会えるとラッ
 キーなんだけどな、と思いつつ店を出た。
 次回はもっと大きな尺鮎が食べられる時期に再訪したい。 (04.08)