迷ってみましょう広島26

   このコーナーは、積極的に道に迷うコーナーです。

  何も書かれていない広島県の白地図を渡されて、「○○町はどこですか」と
 聞かれる。それがどんな市町村名であっても(合併続きで広島県内には村は無
 くなりましたが)即座に答えられる人って、どのくらい居るんでしょうかね。
 もし渡されたのが全国地図で、問われた地名が「東京23区」とか「大阪市」
 とか「福岡市」だったりすると、たくさんの人が「ここ!」って正確に指さす
 んでしょうけども、「作木どこ?」「向原は?」「豊町どれよ?」「油木って
 どのへん?」と聞かれると、はて、分からんのですよ。同じ県内なのにね。
 そして僕も、そんな一人なのですよ。

  考えてみるに、興味が無いんでしょうね、きっと。
 興味が無いから知らない。知らなくても困らないから、そのまんま。
 自戒の念も含めて言わせてもらえば、やっぱり勿体ないですわ、それじゃ。
 1日あれば行って帰ってこれる場所に、色んなものがある。色んな人が住んで
 て、色んな店がある。
 近くて無縁な場所に、わざわざ行ってみにゃならんでしょう。

  前置きが長くなりましたが、今回は上下へ行って来ました。府中市上下町。
 恥ずかしながら、去年府中に行ってみるまで、上下という町が県内のどの辺に
 あるのか、僕は全く知りませんでした。近くて遠い町でした。

  大規模な開発の波に巻き込まれず、昔ながらの家並みや町割が残された、な
 まこ壁の美しい静かな町。事前に少し調べたら、そんな風に紹介されていまし
 た。今回は、JRを使うと広島からではとても時間が掛かってしまうので、車
 で出掛けました。広島バスセンターからなら高速バスも出ているようです。

  まず、上下駅に寄って観光ガイドを手に入れます。なかなか丁寧に作られた
 ガイドマップと、地元の飲食店などが書き込まれた手作り地図の二つをもらい
 ました。車を駅近くの駐車場に止め、さて、散策開始です。

  いや〜ほんと、静かな町ですね。僕が訪れたときには道路工事やってまして、
 それがちょっとガリガリ言ってる以外は静かです。うん、静かです。いや、ほ
 んと静かだなぁ〜、観光客ぜんぜんおらんよ。おいおい。みんなもっと来よう
 よ、ねぇ。ブラブラしにさぁ。

  ここ上下には、他ではあまり見られない特徴的な建物がいくつか有ります。
 教会、元警察署、劇場、昔はきっと色んな所に同じ様なのが建ってたんでしょ
 うけどね、今じゃどこにもありませんよ。教会なんて面白いですよ、蔵の上に
 鐘楼が付いて教会になってるんですよ。警察署も今じゃ御食事処になっちゃっ
 てるし。面白いなぁ。建物を壊さずそのまま使い続けると、こんな風になっち
 ゃったりするんですね。なんか、合成写真を生で見ている感じです。

  通りの中心あたりに、東屋みたいな無料休憩所があったので、そこに腰掛け、
 冬の日差しを浴びつつしばし休憩。やー、ポカポカしてえーですのー。地元の
 ばあちゃんが、通り過ぎがてら会釈してくれました。あ、どーも。すいません
 ね、こんなどこの馬の骨とも分からんオッサンにまで挨拶してもらっちゃって。

  しばらく休憩した後、格子など眺めつつまたブラブラと歩いておりましたと
 ころ、小さなパン屋が営業中でした。あら休日なのにパン屋営業中と思い近づ
 いてみたら、ちょうど良いタイミングでドアがガラガラと横に開いて、今買い
 物を済ませたお客さんと、お客さんを送り出そうとお店のおばちゃんが戸口の
 所まで出て来られました。あらっ、このお客さんは、さっき会釈してくれたば
 ーちゃんのようですね。
 「いらっしゃ〜い」あ、いや、パン買うつもりは特に無いんですが・・・
 「まーまー寒いでしょう、入りんさい、あ、おばあちゃん、それじゃまた」と、
 店を出るばーちゃんと入れ違い、誘われるまま店内へ。あらら〜。

  入ってしまった物は仕方がありません。お店のおばちゃんと多少話をしつつ
 一つ二つ買って帰ろうかとパン棚に目をやりますと、これがお店のおじさんの
 手作りなのだそうですが、「ヨモギ3兄弟100円」「あんぱん50円」「食パ
 ン1斤100円」って、ちょっと安すぎじゃないかい?大きさもけっこうでか
 いよ。「このクッキーもおいしいんよ」と、直径12,3センチほどの堅焼き
 パンみたいなのを紹介してくれるおばちゃん。むむ、確かに旨そうじゃ。しか
 も50円。
 よし、おばちゃん買う、買うよ、そのヨモギとクッキー!

  で、ま、そこでまたちょっとおばちゃんと話しましたら、さっきのばーちゃ
 んは向こうでお菓子やさんをされているのだそうで。「洋酒ケーキとか美味し
 いんよ」あ、それ、お土産に買うつもりでいたやつじゃ、そうかあのばーちゃ
 ん、あのお店の。

  パン屋をあとにし、町内をぐるっとひとまわり。最後に資料館をのぞいてか
 ら、ばーちゃんのお菓子屋さんに行きました。
 「こんちわ〜」「はい、いらっしゃいませ」「今日会うの3回目ですね」
 「あ〜!これはこれは。」などと会話も進みます。
 「どこから来られましたか」「広島です」「ほぅですか、そりゃよう来られま
 したね、雪は大丈夫でしたか」「えぇ、もう道の雪は溶けてましたよ」。
 残念ながら欲しかった洋酒ケーキは売り切れていました。なので、もう一つの
 お土産候補だった「つちのこ饅頭」を購入。

  その後、ばーちゃんから町の色んな話を聞いて、すぐ隣にあるカフェへ行き
 ました。豪商の家を改築した、しっとりと気分の落ち着くカフェでした。飲み
 物は中国茶を頂きました。おつまみに出してもらったシイタケのお菓子も良か
 ったですよ。
  そうそう、もしこのカフェに行く機会があったら、是非トイレへ行ってみて
 ください。トイレに行くまでが面白いんですよ。中庭もきれいじゃし。

 いやぁ今回も、なかなかいい1日が過ごせたなぁ。

 後日、友人と。
 「上下へ行ってきたんよ」「へー、何かあるん」「いや別に。パン屋とお菓子
 屋行ったけど」「ふーん。何かすごい店なん?」「ううん、普通の店」「?」
 でも、特別な店だなぁ、僕にとっては。
 「はい、お土産のつちのこ饅頭ね」「えっ・・・つちのこ?」
 つちのこ饅頭、おいしかったですよ。
 みなさんも、是非食べてみてくださいな。
                             by 自転車