不惑をこえて・・・

不惑をむかえるちょっと前、二年前の日記、を読み返してみると。「迷い道もし
 たけれど、思えば遠くへきたもんだ」と書いている。子供の頃、夢の二十一世紀
 には四十歳、そんな時がくるなんて想像できなかったが、きてみたら大変なこと
 になっていた。二年前に比べても景気に好転の兆しは全く見えない。

 来春、子供が幼稚園に通いはじめる。妻が、共働きなら保育所、専業主婦なら幼
 稚園だろう。安藤ちは、妻が週1〜2日のアルバイト勤務という中途半端な状態
 ながら、幼稚園を選択した。

 このところ、安藤は急ながれ場を下っているような感じである。もちろん、もう
 登り坂ではない。四十肩というのだろうか、右腕を肩よりあげようとすると激痛
 が走る。それだけではない、日常のあらゆる場面で右肩が悲鳴を上げる。シャン
 プーができない、布巾を絞れない、Tシャツが脱げない、棚の上の書類が取れな
 い、目の前のボールペンをとろうと手を伸ばしても激痛。車の後進、車庫入れは
 地獄のよう。

 あるいは、夕刻、手許の書類にふと目をやるとピントが合いにくいことがある。
 一日の仕事、そして全ての家事を終えた十時過ぎに読む、快食案内のレビューは
 改行がなく数行読むうちに目が悲鳴を上げる。以前、眼科医に「若い頃の目とい
 うのは性能の良いオートフォーカスレンズですが、その機能も加齢とともに段々
 機能が落ちてきて焦点が合うのが遅れがちになります」と説明されたことがある。

 幼稚園に通う子供のために週に三回はお弁当を入れなくてはならなくなる。念の
 ために妻に、「君がつくるか?」と問うてみたが、やはり返事は、「とんでもな
 い、あなたがつくって」である。安藤は、若い暇な専業主婦がつくる、手のひら
 大のお花畑のようなお弁当と対抗しなくてはならない。安藤はフルタイムの仕事
 を持っているのに、だ。かなり気が重い。

 時折、かつてのクラスメートと飲むことがある。結婚が早かったやつは、もう子
 供が高校生になっている。安藤も彼も高校生の頃は素行がけっしてよくなかった
 のだが、彼は子供が自分を真似たように素行がよくないとなげく。独身を貫き通
 したやつは、四十を過ぎたとたん二十代の女性にパタリと相手にされなくなった
 とぼやく。なんだか皆でなげいたりぼやいたりしてる。

 「近頃、心底笑ったことないねぇ・・・・」
 「ほんとそうじゃね」

 不惑を過ぎ急ながれ場を下る安藤を心底から笑わせてくれるのは、もうじき三歳
 になる子供だけである。五歳までの子供は天使の領分だという。天使の振る舞い
 はほんとうにおもしろい。後でどれだけ業をいらしてくれるのかはわからないけ
 れど、今はまだ天使の領分だ。その彼のためにお弁当つくりを三年間たのしもう。

 彼が成人の時、安藤は還暦。道はまだまだ遠いのである。ふぅ。


 安藤トロワー@会社勤めをしながら家事もこなす兼業主夫(ああ忙しい)