迷ってみましょう広島28

   このコーナーは、積極的に道に迷うコーナーです。

 仁方へ行って来ました。
 呉市仁方。広島から行くと、呉を過ぎて、広を過ぎて、その先です。
 なーんだか、遠いイメージのある場所です。
 福山方面からでもやっぱり、遠いイメージのある場所なんじゃないですかね。

 で、その仁方に、今回は確たる目的を持って出掛けたのでした。その目的とは
 ズバリ「いちご大福」!そう、あの白くて、中にいちごが入ってて、もちもち
 したあいつです。「仁方にある壺屋というお菓子屋さんのいちご大福がうまい」
 という情報を得たのです。これは出掛けなければならんでしょう!うまいもの
 があると聞いて、ふーん、ああそうですかと涼しい顔をしていてはいけないの
 です。ガブッと噛みついて、もちの柔らかさを歯で感じつつ、いちごの果汁が
 ジュワーと口の中に広がる様を想像するのです。もう、何が何でも食べてみな
 ければならないのです。

 広島からJR呉線で広へ。広でしばしの接続時間ののち、2両編成のワンマン
 カーに乗り換えます。仁方は広の次の駅なので、思ったよりも遠い場所じゃな
 いじゃん、と認識を新たにするところです。電車には学生さんを始め、思って
 いたよりもずっとたくさんのお客さんが乗っていました。

 駅から出ると雨が降ってまして、一緒に降りた他のお客さん達はどんどんいな
 くなるし、あっと言う間に駅前にひとりぼっちになりました。
 駅構内に観光マップでもあるかなと見ましたが、そんな物はなく、久しぶりに
 本当にノーヒントで目的地を探さなければならなくなりました。まぁ、小さい
 町ですから、何とかなるでしょう。事前にちょっとだけ調べたときには駅の近
 くだったと思うんですが。

 駅前の交差点で右左見まして。んー、左かな。左の方が古い町が残ってそうだ
 し。レッツゴー。

 すぐに大きな道路にぶつかったのですが、そこを過ぎたらとたんに静かになり
 ました。細くくねった道。山の手へ向かう路地。高台にお墓。静かな町ですね。
 建物はそこここに新しい家が建っていて、古い家と混在しています。新しい家
 の玄関先なんかに子ども用の小さい自転車が置いてあったりするのを見ると、
 この町が正常に新陳代謝をしているのが分かります。

 酒蔵だったのかなぁ、崩れ掛けた大きな建物がありました。壁や瓦が剥がれ落
 ちるのでしょう、「きけん」と書かれていましたが、その崩れゆく風情が大変
 に見応えのある風景を作っていました。そこにあった大きな煙突が、下からて
 っぺんまですっぽりとツタに覆われているのもなかなか壮観でした。

 この仁方は川を中心に大きくなってきた町だな、とブラブラしていて気づいた
 のですが、多くの道がその川に沿うように、川の曲がりに合わせて道も曲がる
 ようになっていて、こういう町では道に迷うのもあっと言うまですね。気がつ
 けばぐるっと回ってまた同じ場所に出てきてしまっている。おかしい。そんな
 つもりじゃなかったのに。

 川に掛かっている小さな橋も皆それぞれに面白いですね。これは他の町にはな
 い部分かも知れません。たくさんある橋のデザインがちょっとずつ違うんです
 よ。それから、川と住宅の距離ですかね。小さな川でしたけど、大雨が降れば
 大きな流れになるんでしょう。この、川と住宅との距離。橋の高さ。いいです
 ね〜。先人の苦労が忍ばれます。

 川から少し離れた神社のすぐ脇に、小さな流れが覗いているところを見つけま
 した。水路です。
 きっと大昔から、生活用水として利用されてきた水路なのでしょうね。こうい
 う小さな水路はどこの町にもあったはずなんですが、今ではコンクリートの蓋
 で覆われて道路になっていたり、もう完全に埋め立てられてしまったりして、
 目にすることがなかなか出来なくなってきているんですよ。生活のすぐそばで
 水音がするというのは、贅沢な暮らしだなぁと僕なんかは思うんですけど。

 で、回れど回れど「壺屋」が見つからない。仕方ないので駅まで戻って反対方
 向へ行きましたら、1分もしない内に「壺屋」と、でかい看板が見えました。
 うーむ。まぁ、回り道も悪いもんじゃないしね。

 で、壺屋にて念願のいちご大福を購入しまして、帰りの電車まではまだ時間が
 ある、というのでさらにブラブラと桟橋の方へ。この辺は埋め立て地なのか、
 でっかい工場ばかりです。が、どの工場も名前が「つぼ○○」なんですよ。マ
 ークも全部同じで壺の絵に漢字一文字が組み合わさった図柄ばっかし。うわ〜、
 なんでじゃ〜。理由が知りたい〜。壺に何の意味があるんじゃ〜。
 「わしゃぁ幻覚でも見よるんじゃなかろうか」ってなほど壺だらけでした。
 こういう面白い場所には郷土資料館が欲しいですね。

 仁方に行く前、職場のマダム達と「美味しいいちご大福買ってきますから」
 「キャー自転車さんすてきー」なんて会話を交わしてたんですけど、お店で聞
 いたらなんと月曜日まで日持ちしませんとのこと(当日は土曜日でした)!
 これは困ったと思いつつも仕方ない物は仕方ない、どうやったら上手に、怒ら
 せないように説得できるかと考えつつ月曜日、職場に行きましたら、マダム達、
 そんな会話したことすら忘れておりました。

 ほっとしたような、情けないような。
                             by 自転車