迷ってみましょう広島52

 このコーナーは、積極的に道に迷うコーナーです。

 このところ、いくつも島を巡ってきました。遠目には同じように見える島も、
歩いてみれば、他の場所にはない魅力があるものです。江田島、能美島、倉橋
島、宮島。大崎上島に大崎下島、豊島、上蒲刈島、下蒲刈島。阿多田島、大久
野島、仙酔島。因島、生口島、そして今回訪れた向島。

 僕、広島市に住んでるんです。だから県東部の島って、縁遠いところがある
んですが、向島があるって事は昔から知ってたんですよ。尾道の向かいの向島。
じゃぁ向島に何があるんだって聞かれると、これが全く分かんない。知ってる
のは、尾道の対岸にあって、造船所が見えてて、渡船が行ったり来たりしてて
ってことぐらいなんです。何事も知らないままではいけません。行ってみまし
ょう行きましょう。

 今回は、渡船に乗ってみたかったので、電車で出かけました。向島は尾道大
橋で本土とつながっているので、向島へは車でも簡単に行けるのですが、今ま
で渡船に乗ったことがなかったので、どうしても乗ってみたかったんですよ。
 ちなみに、ちょっと調べてみたのですが、広島県で本土と島を結んでいる橋
は6本。西から順に、広島市の暁橋(1893年?)、呉市の音戸大橋(19
61年)、同じく呉市の安芸灘大橋(2000年)、尾道市の新尾道大橋(1
999年)、尾道大橋(1968年)に、福山市の内海大橋(1989年)の
6本。向島へつながる尾道大橋ができてから、もう42年も経つんですね。

 尾道駅から海沿いに歩いて渡船乗り場へ。尾道渡船に乗って向島の兼吉地区
へ。乗船料は100円。切符は無くて、出港してから海上で船のおじちゃんに
お金を直接払います。対岸へはあっという間に到着。さあ、散策開始!

 古い商店街から、山の手に向かう細い路地をちょっと入ってみますと、あり
ますね、左右に延びる古い道が。こういう古い道の面白いところは、これは迷
いそうだと思いながら歩いていても、それなりに想定したところへ出てしまう
ことです。不思議ですね。一見無計画に延び広がっていったような道の網が、
結果的に、その時自分のいる場所からどの方向へも移動しやすい構造になって
いる。いや、移動が苦にならない構造と言った方がいいのかな。ちょっと歩け
ばもう目的地。

 面白い面白いと言いながら歩いていたら、突然、大きな道に出ました。車が
どんどん通る大きい道。あらら、急に現代っぽくなりました。なにやら大きな
ショッピングセンターも見えてますし。そりゃそうでしょう、橋ができてから
40年以上経つんです。車社会になってて当然です。それにしても、さっきの
町並みとのギャップが大きいですね。

 そこから、国の重要文化財である吉原家住宅へ向かいました。車がどんどん
走る国道の脇を、ひたすらまっすぐ歩くというのは面白くないですなぁ。いつ
の間にやら家は少なくなり、僕の他に歩行者なし。車ばかりにぎやかです。こ
っちかなと国道を外れて細い道を上り、峠を越えると、大きなため池がありま
した。ため池は、水の少ない土地で農業を営むための、先人の知恵と苦労の結
晶ですなぁ。土でできた堰堤に、池を見守るように大きな木が一本、堂々と根
を張っていました。いつから生きとるんかなぁ。大きい木でした。

 堰堤より下には、かつて農地であったであろう草地が広がっていました。そ
してその草地の向こうの茂みに、吉原家住宅はありました。この近辺にあった
農家をまとめる庄屋さんだったそうです。そこから、あっちへ行き、こっちへ
行きしながら海まで戻り、渡船に乗って帰りました。

 今回出かける前に、向島について少し調べてみたんです。そうしたら、「観
光」とか「歴史」とかの情報がすごく少ないんですよね。で、実際に来てみた
らどうだったか。たしかに、観光の目標たり得ているところは少ないです。で
もね、それって、本当は宝物がいっぱいあるのに、それを発掘しきれていない
からじゃないのかな、とも思います。この島にはこの島だけの歴史があり、人
々の小さな営みが積み重なってきたことの痕跡が、まだまだたくさん残ってい
るんじゃないでしょうか。そういうのを丹念に調べ上げて、まとめて、見える
形にして、誰もが楽しめるように、って誰かしてくれないかなぁ。そうしたら、
きっともっと楽しいと思うんだけどなぁ。県知事さんどうですか?
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