迷ってみましょう広島36

   このコーナーは、積極的に道に迷うコーナーです。

  ようやく秋らしくなってきたかと思ったら、県北じゃもう雪です。今年の冬
 は厳冬だなどと長期予報を聞きますと、暑いのも寒いのも苦手な私といたしま
 しては、早く春にならんかなと鬼が笑うようなことを考えてしまいます。

  さて、新聞を読んでおりましたら、尾道に関する話題を二つ目にしました。
 一つは、映画館がNPOによって復活されるという話題。もう一つは老朽化し
 た歩道橋を撤去するという話題。それからもう一つ、尾道の話題じゃないんで
 すけど、山陽本線で広島から尾道・三原方面へ行くときに必ず目にする、広島
 県央フライトロードの空港大橋。現在建設中のこの橋のアーチがつながったと
 いう話題。
  これは鉄道に乗って尾道へ行けという神のお告げじゃわい、と訳の分からぬ
 妄想の結果尾道へ行くことにしました。前に行ったのはいつだったかな〜。尾
 道はいつ行っても面白い街なので、尾道へ行くと決めると、それだけでなんだ
 かじわっと楽しくなってしまいます。
  今回はかみさんと二人で行くことにしました。いつも一人で勝手に歩き回っ
 ていたのですが、大丈夫かなぁと一抹の不安を抱えながらの出発となりました。

  家を出るのがちょっと遅れたので、広島駅に着いた時には、予定していた電
 車はすでに出た後でした。次の電車までしばらく時間がありますので、駅弁で
 も買おうかという話になり、構内の弁当売り場をのぞきます。うーむ、どれに
 しようかな〜。おっ、この「しゃもじかき飯」いいじゃないですか。僕はどう
 もこういう炊き込みご飯類に弱いのですよ。値段はいくらかな。1050円か。
 うーむうーむ、ラーメンに換算したら1杯半ぐらいですかね。肉玉そばならト
 リプルでもお釣りが来るな。うーん、ま、いいか、買っちゃえ。

  駅弁を買って電車に乗ると、発車してもいないうちから蓋を開けたくなって
 しまうので困ります。車窓からビルが消え、色づいた木々が見えるようになっ
 てくると、旅情も増してきます。よし、弁当食べよう。頭の中では山口百恵が
 「いい日旅立ち」熱唱中。

  西条の煙突群を過ぎると、やがて線路は少しずつ下り始めます。谷間に川が
 見えてきたなと思う頃、突然、グレーの巨大なアーチが現れました。
 出た。これが空港大橋のアーチですよ。でかいなぁ。同じ車両のおばちゃん小
 旅行グループも、窓から橋を見上げてわぁわぁ声を上げています。遠くから見
 ると谷に虹が架かったようなかわいらしさがありますが、近くで見るとその大
 きさに圧倒されます。SFマンガにしか出てこないような、橋脚脇の斜面を斜
 めに上下する巨大な工業用エレベーターが、人類の工業力をこれでもかと見せ
 つけております。
  こうして何年もかけて作られた道も、自動車で走るときには一瞬で通り過ぎ
 てしまうんですよね。

  三原、糸崎を過ぎ、瀬戸内海がぱっと開けてきたら、もう尾道です。
 線路すれすれに建つ木造の民家、軒先の洗濯物が電車の風ではためく景色を見
 るたびに、あぁ尾道に来たなぁと感じます。
  駅に降りると、駅構内に観光案内所ができていました。そういえば、観光案
 内所がしまなみ交流館からこちらに移されたというニュースもいつだったか目
 にしましたよ。その案内所でマップをもらって外に出ました。
  外に出てみると、この日はいい天気ながら風が冷たい日でして。こりゃまい
 ったね、まぁ歩く分にはあんまり関係ないかなと振り返ると、我がかみさんあ
 まり元気がない御様子。どしたん?と聞くと「お腹すいた」。お腹すいたって
 あなた、さっき駅弁半分食べたじゃないの。その後お菓子も食べてなかったっ
 け。僕はまだお腹はすいてないのにあなたはもうすいたとおっしゃるのですか。
 「だってもう昼だし」。そりゃ時間はもう昼ですよ、12時前ですけどね、弁
 当食べたのついさっきですよ。困ったな、ちょっと街を歩いて気が向いたとき
 にお店に入ってお昼にするつもりだったんだけど。

  仏頂面のかみさんを何とか説得し、とりあえず商店街の方まで行ってみるこ
 とにしました。路地をのぞき込んでは、ほらこの道どこに通じとるんかね、入
 ってみたくなるじゃろなどと声をかけるも、かみさんは飲食店しか目に入らな
 いようで、「ねぇ、どこに入るん?」。いやいや、どこに入るかなんて決めて
 ないんよ、面白そうなところがあったら入ってみようと思うんよ。なるべく他
 の人が入らなそうな、変わった店とか。面白いじゃろ?「どこでもいいから早
 く食べさせて。」

  そんな具合に、ああでもないこうでもないと言い合いながら歩いているうち
 に、徐々にかみさんの言葉数が少なくなってきました。やばいですやばい兆候
 です。だんだん目もつり上がってきました。も〜、何でこんなことにならなき
 ゃならんのですか。わし悪いことしとらんですよ。いやいや、今そんなことを
 言ったって無駄です、とにかく早急においしそうな店に飛び込まないと。

  で、爆発寸前のかみさんを何とかなだめつつ海岸通りの小さな和食のお店に
 入りました。僕は刺身定食を、かみさんは焼き魚定食を注文。焼き魚は太刀魚
 でした。ちょっと食べさせてもらったら、皮が実に香ばしく焼けていて、いい
 香りが口の中に広がります。僕もそれにしたら良かったな。
  胃袋がふくれて、かみさんにもようやく笑顔が戻り、やれやれ、なんとか一
 件落着。食べ物というのは実にありがたいものですな。

 ちょっと長くなってきましたので、残りは次回に。
                             by 自転車