迷ってみましょう広島36 後編

   このコーナーは、積極的に道に迷うコーナーです。

 前回までのあらすじ:かみさんと尾道までやってきたのは良いけれど、空腹で
 かみさんが爆発寸前に。すんでの所で昼食にありつき事なきを得て、いざ商店
 街へGO!

  さて、ようやく街歩き開始です。何度来ても思いますが、尾道という街はぶ
 らぶらするには最適の街ですね。昔から長く営業しているお店が多いなんて、
 しかもそこに古い建物を改装した新しいお店が混じっているなんて、素敵な事
 だなぁと思うんですよね。
  かみさんはさっきから、どの店に入ろうかと店先からのぞき込んだり、右左
 きょろきょろしながら歩いていますが、僕は古くからあるお店がのんびりと営
 業している様子を見るのが好きなんですよ。木造の建物に黄ばんだ蛍光灯、時
 が止まったような薄暗い店の奥の方で、主人が近所の知り合いとのんびり話を
 しているような、そんなお店の佇まいが好きなんです。ほんとにこんな様子で
 商売やっていけてるのかなぁと思うこともよくあるんですが、いつ来てもお店
 がつぶれずにあるところを見ると、それなりにやっていけているということな
 んでしょうか。

  かみさんが「行きたい店がある」というので暗い路地の奥へついて行くと、
 ほそい丁字路の脇に小さな雑貨屋さんが営業中でした。このお店もやはり、古
 い建物を改装したお店ですね。低いひさしにガラスの引き戸。路地独特の湿っ
 た空気が、店外にこぼれてくる裸電球の明かりで、ぼんやりと暖められている
 ような、静かな店先。いいですね。
  先にお店に入って品定めに忙しいかみさんを横目に、しばらくの間、外から
 店内を眺めて楽しんでしまいました。こういう場所で静かに過ごすのって良い
 なぁ。これで生活していけるんだったら、こういうのも有りなのかな……と、
 ふと考えたりもしますね。

  何を買うというわけでもなく、陳列してある商品とそこに漂う空気を堪能し
 て、またふらりと路地へ出ます。それにしても寒いなぁと狭い路地から細長く
 冬空を見上げておりますと、思いがけずまた、電球の暖かなオレンジ光が視野
 の隅に入ってきました。路地に面した長細い町屋、白壁の2階にあいた窓から、
 その部屋の天井が見えています。あらいいねー昼真っから煌々と点けて、宴会
 でもやってんのかな?と見上げながら歩いていたら、ギャラリー入り口の看板
 にぶつかりそうになりました。なんだ、あの2階は店か。そしてこの階段が入
 り口。分かりにくいところにあるなぁ。お客さん入るのかなぁ。ちょっと面白
 そうなので入ってみました。

  靴を脱ぎ、えらく角度の急な階段を上りますと、2階はきれいに改装されて
 いて、たくさんのガラス作品が並べてありました。作りとしては完全に民家な
 んですけど、それが店になっている不思議さ。昔からの建具や柱を見ていると、
 子どもの頃おばあちゃんちに行ったときのことを思い出します。作品をぐるっ
 と見て階段を下りようとしたら、「関係者以外立ち入り禁止」の先に、さらに
 上に上がる階段があります。この家は3階建てなんですね。木造3階建て。階
 段近くには一坪ほどの小さな中庭があって、そこを見下ろす窓の外には洗面台
 が引かれていた跡もあります。面白いですね。中庭に向いて顔でも洗ったんで
 しょうか。
  1階が店舗の細くて長い家だから、部屋数を確保するために3階建て。建物
 中心部への採光のために中庭がある。かつてこの家に住んでいた人は、この2
 階の窓辺に腰掛けて空を眺めたりもしたんでしょうかね。 

  その後、商店街の「長江」にて、売り切れだったフカヒレスープを惜しみつ
 つ肉まんをほおばり、お茶を飲んで良い気分。さあ帰ろうかと駐車場に向けて
 歩いていると、またまたかみさんが吸い込まれるように不思議な店に入ってし
 まったので、やれやれと思いながら付いて入ってみました。後からかみさんに
 聞いたところ「一体何屋か分からなかったから入ってみたのよ」と言うており
 ましたが、まさにその表現がぴったりの摩訶不思議な店構え。童話に出てくる
 お菓子の家のすぐとなりで営業していそうな雰囲気のお店です。
  で、何屋だったかというと、ハーブティーのお店でした。店内には、見たこ
 とのないお茶の箱が壁一面に積み重ねてあり、それぞれが発する香りが狭い店
 内に充満して空気にまで色が付いているかのようです。

  うわ〜、見たことのないものばっかりだと、陳列棚をじろじろ眺め回してい
 ると、不意に背後に人の気配が……。「どうぞ」うわっ、びっくりした。あ、
 店主さんですか、こりゃまたお店にぴったりな雰囲気の。「サービスです」と、
 小さなグラスに謎の液体。へぇ〜、お茶かなぁ。いただきます。あ、おいしい。
 甘くてすっきりですよ。この商品の中のどれかなのかなぁ。棚の脇に手書きの
 カードのようなものがあったのでちらと見ましたところ、「お店でお出しする
 飲み物の中身は秘密です」。

  …………なんじゃこの店。

  さすが尾道おそるべし。

  で、結局、いただいたお茶の正体は分からず、これまたよく分からない酸っ
 ぱくて赤いお茶を買って帰りました。

  今回はかみさんといっしょだったので、僕一人では入らないようなお店にい
 くつも入りました。こういう風に自分では行かないところへも行ってしまうと
 ころが、誰かといっしょに出かける楽しさですね。
 多少面倒くさいですけどもね。

 長江 tel:0848-20-7729
 尾道市十四日元町1−22

 Primitive moire tel:0848-25-2258
 尾道市土堂1−3−24
 http://herb.jcom.to/
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