迷ってみましょう広島55

 日本百名山とか、名水百選とか、いろんな百選がありますが、疎水百選とい
うのがあるのをご存じでしょうか。疎水とは何かというと、「灌漑・給水・舟
運または発電のために、新たに土地を切り開いて水路を設け、通水させること。
また、そのもの。」と、広辞苑には載っています。京都に詳しい方には、琵琶
湖疎水がお馴染みでしょう。そんな、今も日本全国にたくさんある疎水から1
10箇所を選んだものが疎水百選です。広島県からは二つの疎水が登録されて
います。一つは広島市にある八木用水。そしてもう一つが今回取り上げる、芦
田川用水です。

 水路なんぞ見て何が面白いんかと、思うでしょう。僕もそう思います。でも、
見たことがないから、見てみたら面白いかもしれない。せっかく福山まで出か
けていくんだから、テーマに沿って(今回の場合は水路に沿って)歩いてみて
も良いんじゃないか、と思いましてね。

 水の流れに沿って歩くのだから、道には迷わない。探求心に駆られて流れを
追いかけるうち、いつしか見知らぬ場所まで来てしまっていた幼い日のことを
思い出します。

 今回はさすがに、全くの行き当たりばったりで歩くわけにはいかなかったの
で、事前に地図で調べてきました。福山駅の北口から出て、お隣の備後本庄駅
を目指せば、その近くに水路が見えるはずです。こっち方向だよなと当たりを
つけて歩きますと、ビル街はあっという間に住宅街になり、山が迫ってきたな
と思った頃、田んぼと水路が見えました。ありました、これです。

 のぞき込んでみますと、清流とは言い難いもののそれなりに透明度のある水
の流れ。魚の姿も見えてます。ここから下っていきましょう。

 歩き始めてすぐに、景色はまた住宅街に戻りました。以前は田や畑ばかりだ
ったのでしょうが、今ではどこにも見あたりません。水路の存在が逆に不自然
で、コンクリートで垂直に固められた水路壁を見ていると、どこか邪魔者扱い
されているのかのようです。

 狭かった川幅が、徐々に広くなっていきます。鯉も泳ぎはじめました。この
水路にはゴミが浮いてないですね。こまめに手入れされているのでしょうか。
砂が堆積した川底には所々水草が生えているものの、アシなどの植物は見られ
ません。水路として活躍してもらうからには、水の流れを遮るものは必要ない
のですね。

 幅が広くなってきました。もう水路じゃなく完全に川だな、でもそれにしち
ゃえらく流れが無くなってきたなと思ったら、アーチ状の橋が見えてきました。
蓮池公園と書かれた石碑があります。ほほー、川の途中なのに池ですか。見る
と白鳥と亀が橋の上から人が撒いた餌を巡って火花を散らしておりました。亀
くんスピードが出ず断然不利です。

 このあたりから、ずいぶん親水性が増してきました。川沿いに木が植えてあ
ったりと、良い雰囲気です。おや、山の手からもう一本水路が合流してきまし
たね。といっても互いの水面の高さに随分差があります。どうなるのかなと思
って少し歩くと、あ!なんと立体交差してます!うわー初めて見ました。川と
川が交差して、さらにその上を道路が走ってます。これはめずらしいものを見
ました。なんで1本にまとめないんでしょうか。多分、水を使う人の都合なん
でしょうが、それにしても水を交差させるとは。

 その立体交差を見てから俄然面白くなってきまして、きょろきょろしながら
不審者ぎりぎりの顔つきでしばらく歩き続けましたら、支流のような所にまた
あった!あったよ立体交差。うわー、今度は両者の水面の高さにほとんど差が
無いんですけど。これ同じじゃん。くっつけたら良いじゃん。意味無いじゃん。

 この光景を何とか写真に納めたく、ああでも無いこうでも無いとカメラをの
ぞき込んでおりましたら、不意に背中から声をかけられました。
「何しよるん。」振り返ると小学生低学年男児が二人、自転車にまたがってこ
ちらを見ております。「ここって川が2階建てになっとるでしょ、知っとる?」
「うん、しっとるよ。」「めずらしいけぇ写真撮りよったんよ。」子どもの相
手めんどくさいな~。いや、ちょっと待てよ、案外こういう子どもの方が大人
の気づかないようなおもしろ情報を持っていたりするかもしれません。「他に
もこういうところ有るんかねぇ。」「さぁ……。あ!そうじゃ!」「なに?」
突然もう一人の方を向いて「わしこないだあっちで亀見たんで。」「え~どこ
~?」そう言ったきり二人はぶい~んと去っていきました。

 おいっ。おもしろ情報は!亀なんかさっき見たわい!

いえいえチビッコに腹を立ててはいけません。チビッコには亀ちゃんがアラブ
政変より大ニュースなのです。

 そんなこんなでさらに下り、小学校の横を過ぎ、海の匂いがし始め、水もよ
どんできたあたりで歩くのはおしまいにしました。海に注ぐ時まで、きれいな
水だったら良いのになぁと思いながら、近くに見つけた出雲蕎麦屋で割子を注
文するのでした。

疎水名鑑
http://www.inakajin.or.jp/sosui/

大黒屋
http://hamanet.jp/kaishoku/detail.aspx?txtKshopcd=670