日本一の居酒屋!!

先日、広島ガイドメールマガジンのオフが開催され、二十数名で店内貸し切
 りという大盛況。ところで「安藤さんて主夫で仕事してないんでしょ」とか
 いわれて心外(しくしく)。朝6時に起き、豪華朝食つくりに始まり、8時
 から17時過ぎまでは会社勤め、定時帰宅後22時まで家事炊事。仕事と家
 事に明け暮れる日々でTV見る間もないほど働いているのに(しくしく)。

 さて、本題。昨年だったかしら広島と別府を結ぶフェリー航路がなくなっ
 た。この航路があったからかどうかは知らないが、実は広島には意外と別府
 温泉マニアが多い。広島人なのに鉄輪(かんなわ)の隅の隅まで知り尽くし
 ているというような人もいるらしい。安藤はそこまでではないがけっこう鉄
 輪をはじめとする別府温泉事情には詳しい。というのは年に数回、夜の用事
 で大分市に行った時、日中は別府で温泉三昧をするからである。安藤は海浜
 砂湯が好きかな?竹瓦も風情があるし、鉄輪の小さな共同湯も捨てがたい。

 大分での夜の用事というのは、接待とか、仕事の打ち合わせとかではない。
 とある居酒屋に行くのが目的だ。安藤はこの居酒屋を「日本一の居酒屋」と
 標榜している。ここのオヤジに会うために、そしてオヤジの料理を食べるた
 めに、わざわざ大分まで出かけるのである(ずいぶん酔狂だと思うけど)。

 その店の名は、「野の味しみず」という。なぜ「日本一の居酒屋」なのか。
 それは、「野の味しみず」のオヤジのとてつもなく強烈な個性による。ご主
 人の容貌は、はっきり言って怖いくらいだ。大分といえば関サバ、関アジ、
 うまい魚が揃っている。オヤジが酢でころがした関サバのタタキなんぞは絶
 品(〆サバではなく、酢でころがすのだそうだ)。地鶏はオヤジ自らが飼
 い、自らがしめる(つまり、殺す)。野菜も自らがつくった旬のものばかり
 を使う。メニューは無いといったほうがよい。すわって待っていれば、その
 日の素材で、驚くほどうまいものが次々出てくる。地鶏や魚もうまいが、特
 筆すべきは、やはり味と香りの濃厚な旬の野菜の数々であろう。売っている
 野菜とは次元が違う。

 「野人料理っちゅうのや。これは、野の人の料理や」

 客筋はひじょうによろしい。女性の一人客が安心して入れる、そして常連に
 なれる店なのである。下卑な客も猥雑な客も粗野な客もいない。この店にふ
 さわしくない客は、オヤジがすべて力ずくででも叩き出すからだ。

 オヤジは、日に3時間くらいしか寝ないそうである。ほとんどの材料を自ら
 が調達するのだから、確かにどう考えても寝る時間はなさそうだ。15人く
 らい入る店だが手伝いの女性と二人だけで実に手際よく客をさばく。年中無
 休、大晦日も元旦も営業。このオヤジ、なんだか過去にすごい修羅場をく
 ぐってきたんじゃなかろうか。すごく太い芯が身体を通っていて、そのとて
 つもない太さが客との会話や料理に見え隠れする。その太さにふれるのが楽
 しくて、安藤はわざわざ大分に通うのである。「日本一の居酒屋」に。

 広島と別府を結ぶフェリー航路がなくなったのは、本当に残念なことだ。
 大分に行くのに余計な手間が増えた。


 安藤トロワー@会社勤めをしながら家事もこなす兼業主夫