迷ってみましょう広島56

 このコーナーは、積極的に道に迷うコーナーです。

 広島県内で一番有名な島というと、なんといっても廿日市市の宮島でしょう。
次に有名なのはどこかなぁ。自衛隊のある江田島、造船で栄えた因島、毒ガス
資料館のある大久野島。音戸の瀬戸があるのは倉橋島、瀬戸田で有名な生口島、
鞆の浦の仙酔島。旧日本軍の検疫所があった似島を挙げる方もおられましょう
か。広島県には有名な島がたくさんありますね。

 それに比べ、橋がつながっていなかったり、島が小さかったりすると、どう
しても釣り愛好者以外には知名度が低くなります。大竹市の阿多田島、呉市の
情島、福山市の走島など、近くに住んでいるけど行ったことがないという人も
多いのではないですか。かくいう僕も、上記三島へは行ったことがありません。
やはり船に乗らないと辿り着けないというのは、ちょっとハードルが高くなる
と思います。

 では、橋で本土とつながっているのに行ったことのない島はもう無いかな…
…と、地図を眺めていて見つけました。福山市内海町の、田島と横島です。皆
さんはご存じですか、田島と横島という島を。僕はこの歳まで知らんかったで
すよ。ごめんなさい。僕が知らんのは、ずっと広島市在住だからでしょうか。
福山の方の人はみんな知っとるんかなぁ。何はともあれ行ってみなくては。

 山陽自動車道を福山西ICで降りて、県道47号を南へ。五叉路を通過し山
へ上がってまた下ったら街に出ました。沼隈。ははぁ、ここが沼隈というとこ
ろですか。沼隈郡ってありましたよね。ここがその中心ですかね。そういえば
鞆に沼名前(ぬなくま)神社ってありますよね。関係有るんかな。どうみても
有りそうじゃな。ぬまくま・ぬなくま・ぬまくまぬなくまくまくま……ああー
信号行き過ぎた、今のところ曲がるんじゃなかったっけか。もぅ~とUターン。
内海大橋こっちと書いてあります。これですこれ。

 本土と田島をつなぐ内海大橋は、珍しいことに、橋の真ん中あたりで大きく
カーブしています。いや、二つの橋を海上でくっつけたと言う方が良いかもし
れません。面白いですね。海鳥になったつもりですいーっとハンドルを切りま
す。

 橋を渡ると、そこが田島。島の北側の海沿いの道をしばらく走り、ごく短い
橋を隔てて次の横島へ。横島に福山市うつみ市民交流センターという公共施設
があり、その中に歴史民俗資料展示室があると事前に情報を得ていました。そ
こに行けば島の歴史が分かると思ったので、まずはそこを目指します。

 着いてみると、これがかなり立派な建物。市役所の支所や図書館、ホールに
温水プールまで一緒で、実にオールインワンな建物です。民俗資料室は入り口
のすぐ横、これも立派な展示室でした。年表や資料を見ると、かつてこの島は
製塩が盛んだったこと、漁業も盛んで、島の漁師の操船技術が優れていたこと、
その技術を買われて長崎まで捕鯨船の乗組員として若者が多く出稼ぎに行って
いたこと、フィリピンに渡って漁業をしていた人も多かったことなどが分かり
ました。

 広島県からはハワイやブラジルへの移民が多いのは知っていましたが、フィ
リピンに渡り漁業で活躍していた人々が居たとは知りませんでしたね。よい勉
強になりました。

 さて、予備知識も得て町内を散策。漁師町なら狭い路地が網の様に広がって
いて、所々に網元っぽいでっかい家があって、海の神様がまつってあって、と
いう予想を立てて歩き始めたものの、どうも様子が違う。そんなに古くない家
と、空き地が多いのです。漁港にもあまり船が泊まってないし。もっと混み混
みした感じがすると思ったんですけど、意外にも開けた感じがします。しかし、
道の脇を注意して見てみますと、かつてそこに家があったのでしょう、石の基
礎があちらこちらに見えてますね。ああ、この空き地にも、あっちの空き地に
も、家が建っていたのですよ。過疎と高齢化ですか。

 色々歩き回っているうちに、田島と横島の間の細い海峡に面して、立派な石
灯籠が建っているのが見えました。しかし、すっかり忘れ去られたように建物
の裏手にそっと建っている状態で、とても丁重に扱われているという風には見
えません。堤防伝いに何とか接近し、刻み込まれた年号を見てみますと、やは
り、随分古いものでした。かつてこの灯籠が明々と灯をともし、漁師達の命を
預かる重責を担っていた頃、この街には今よりもっとたくさんの歓声や産声が
充満していたことでしょう。長きにわたりこの海と島と人々を見つめてきた古
灯籠は、今、何を思うのでしょうね。

 そんな、ちょっと寂しい気持ちを抱えつつ、刺身定食を食べて帰りました。
帰りの道すがら、沈む夕日に光る海がとてもきれいでした。

福山市観光案内
http://www.fukuyama-kanko.com/

うつみ荘
http://www.bingonet.jp/utsumi-so/