迷ってみましょう広島49

 このコーナーは、積極的に道に迷うコーナーです。

  行く先々で資料館を見つけては入り、出てくる頃には気分はすっかり柳田國
 男。そんなことを繰り返してきましたが、広島市南区にあります広島市郷土資
 料館へは、行ったことがなかったのです。広島市の歴史に関する資料館は他に、
 広島城と広島平和記念資料館がありますが、縄文からの資料があるのはここだ
 けです。
  ですがこの資料館、他の二つと比べてみると、ちょっと知名度が低いように
 思います。それから、同じく歴史を扱う三次風土記の丘や福山の県立歴史博物
 館と比べても、やっぱりちょっと影が薄い印象がないですか。なんででしょう
 か。ちょっと考えてみました。

 1.広島市中心部が三角州だから。
  そうだよなぁ、毛利輝元が広島城を造った頃には、今の平和大通りから南は、
 まだ海だったんですよね。広島は新しい町なのです。

 2.みんな原爆で吹き飛んだから。
  きっとこれですよ。今、広島市内にある国宝は、東区牛田にある不動院だけ
 ですが、原爆がなけりゃぁ、きっともっとあったんじゃないかと思いますよ。

  ないないづくしの中で、それでも頑張っているアンタはエライ!というわけ
 で、行ってきました。

  広島市郷土資料館は、古風なレンガ造りの建物です。それもそのはず、この
 建物は、旧陸軍の缶詰工場だったのです。資料館に入ってすぐ、立体地図の横
 にひっそりと、缶詰工場だったころの資料が展示してありました。牛肉の缶詰
 ですって。ここで作られた缶詰は、陸軍のマークを刻印されて軍隊に送られた
 そうです。陸軍のマークがあるのを初めて知りましたが、なるほど、その気で
 見てみますと、戦前の地図には軍の施設にそのマークが書いてありますね。

  さて、現在この資料館では、松本清張展が開催されておりまして、常設展は
 一部しか見ることが出来ませんでした。すいません私、松本清張の熱烈ファン
 じゃないもんで。や、そりゃ、自筆の原稿やら万年筆やら、ちゃんと見せても
 らいましたよ。でも、和傘や、かもじ(昔のエクステンション)も見たかった
 な・・・。

  千田貞暁、ノリ養殖、山まゆなんかを見ながら、広島もすごいもんじゃのぅ
 と思ってみて行きましたら、ついに出ましたカキ養殖。カキなくして広島は語
 れんでしょう。
  広島市西区商工センターの広島市水産振興センターにも、カキ養殖について
 の詳しい展示がありますが、ここの展示も詳しいですね。その中でも面白かっ
 たのが、カキ船についての展示です。今も平和公園近くの川にカキ船が浮かん
 でいますが、最盛期だった明治から昭和初期にかけては、もうえらいことにな
 ってたみたいで、草津、仁保、矢野、海田から70艘を超える数のカキ船が大
 阪で商売をしていたらしいです。倉敷の大原美術館近くへも行ってたんですっ
 て。
  さらに面白いことに、当時のメニューが残ってるんですよ。どこの資料館へ
 行っても、昔の飲み屋や食堂のメニューなんて無いですからね、貴重ですよ。
 「カキ飯」「カキフライ」あるなぁ。やっぱカキフライだよなぁ。レモンもつ
 いてたのかな。
  もう一つ隣には、なんと江戸時代のカキ船のメニューが再現してあるじゃな
 いですか。どういう事かと見てみましたら、東林というお坊さんが1832年
 に京都から広島へ向かう途中、大阪のカキ船で食事をしたのを詳細に記録して
 いたのだそうでして。いいなぁ。ありがとう東林さん。

  その東林さんが食べたものですが……「カキと芹の鍋」カキと芹をしゃぶし
 ゃぶ風で。「カキの土手焼き」味噌を塗った鍋でチリッと焼いてパクリ。「カ
 キのからまむし」炒めたおからと和えたものですって。食べたこと無いなぁ。
 「カキのごま油炒め」炒めて、大根おろしと醤油で食べる。「酢ガキ」これは
 今と変わらず。「辛い煮付け」この、『辛い』が謎なのだそうで。おそらく生
 姜じゃないかということです。「カキの吸い物」『ウレシ野』という謎の食材
 とともに吸い物で頂く。なんだよ『ウレシ野』って。「カキ飯」これも今と変
 わらず。でも東林さん、このカキ飯は「食スルニタヘス(食するに堪えず)」
 ですって。臭みが残ってたんですかね。

  こうしてざっと見てみますと、酒が欲しくなるラインナップ。そしてもう一
 つ思うのが、今とそんなに変わらんなぁ、ということ。いつの時代も、所詮ひ
 とはひとってことですかね。

  この東林さんの食べた料理は、作り方をプリントした物が資料館に置いてあ
 ります。興味のある方は是非資料館へ!

広島市郷土資料館
http://www.hiroins-net.ne.jp/kyodo/

広島市水産振興センター
http://www.suisansc.or.jp/index.htm
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