豚鳥(とんとり)

  焼き鳥・鶏料理 広島市西区
 広島県広島市西区己斐本町2-13-28 TEL:082-273-2606 17:00-0:00 月休

 肝150円、ささみ200円、せせり150円、親鶏150円、皮150円、つくね200円、
 砂肝150円、豚バラ250円、ハツ150円、もつ煮400円、漬物280円、ザク380円、
 トマトマリネ400円、生セロリ250円、ししとう串120円、オクラ串150円、
 オニオンスライス200円、焼むすび200円、焼き鳥丼580円

 古めかしいという表現を通り過ぎ、端的に言えば場末感満載の「己斐ショッピング
 センター」の最奥にある店だ。店名は「豚鳥(とんとり)」と読ませる。その名のと
 おり、豚と鶏の串焼きを食べさせる店だ。席は普通に座れば6名、ギリギリ詰めて
 名が限界ではないか。全てを店主一人で切り盛りするため、それくらいが限界とい
 うのもあるだろう。
 
 提供する料理はいくつか定番の6〜7品があるものの、多くの部分が日替り。
 特に内臓系統は鮮度を重視しているため、レバー以外は品切れが多い焼鶏店を食べ
 歩いている人ならピンと来るだろうが、傾向は明らかに「鳥酢」「西乃屋」のイン
 スパイア。本人もファンであることを隠さないところが潔い。一串の肉の量は多め
 で、平串を打ち、しっかり塩胡椒して供する。熱源はもちろん、炭火だ。
 
 一番のウリは正肉ではなく、肝。ぷりぷりの鶏肝に塩をして焼き、仕上げに荒塩、
 胡麻油、青ネギをのせる。焼き加減はちょっと驚くほどレア。生レバーを気にする
 人は食べられないと思う。まだ内側から血が滲んでいたりするのだ。肝の質は極上
 とまでは言わないが、値段とサイズを考えると上々。個人的には胡麻油や青ネギよ
 りも、キリリとしたタレで焼いてあるほうが好きかな。胡麻油で食べると確かに味
 は丸くなるが、肝の細かいニュアンスもマスキングされるんだよね。
 
 初めて訪れた人には、必ず一度試してもらいたいが、肝好きでも好みは分かれるよ
 うに思う他に面白いのは親鶏。硬くゴリゴリした肉質だが、噛み締めると味がある。
 これも食べ手を選びそうな一品だ。たぶん、一般的な部位はかしわと書いてある
 若鶏のモモ肉だろうが、僕は食べたことがないので不明。この店のように面白い
 部位が揃っている店で、わざわざ普通の部位を、しかも親鶏と被るのに食べる必要
 はないように感じるのだ。ささみは言えばしっかり焼いて出してくれるだろうが、
 レアでお願いすればかなりレアで出てくる。上に既製品のワサビペーストのような
 ものが乗ってくるのはご愛嬌。
 
 店主が若いというのもあるけれど、メニューに記載してある枝豆なんかも、市販の
 冷凍枝豆の袋から、直接熱湯に入れて茹でたりしている。若いから肉には興味関心
 が高いようだけど、野菜にはそこまで思い入れがないのかもしれない。
 あ、こう書くと、漬物のことは別記しなければなるまい。枝豆はそんな感じだが、
 漬物は当たるとかなり良い。きちんとした糠床に漬け込んでおり、実に真っ当な
 糠漬けを出してくれるのだ。それもそのはず、その糠床は、おでんの「とくあん」
 から譲り受けたものだと言う。あの変なところで気難しいおっさんがよくくれたな
 と思うが、それが店主の人柄なのだろう。実際、客あしらいはかなり良い。
 変な客の変な物言いにも丁寧に答え、へへへっと笑って場を和ませる。無理に取り
 繕っているのではなくて、そういうキャラクターなのだと思わせるところが凄い。
 実際は違うのかもしれないけれど。
 
 料理の説明が途中だった。他に僕はつくね、豚ハツ、豚舌辺りが面白いと思う。
 つくねは日曜日だけ生つくねとして出し、火曜日からは下茹でしたものを焼いて出
 すという。生つくねはまだ食べたことがないけれど、茹でたつくねがあれだけ旨い
 のだから生で焼くとさらに旨いだろうと思う。叩いた軟骨がコリコリと入っている
 ところとか、せせりが主体になっているところとか、判る人はなるほどと感じるほ
 かないのだけれど。豚ハツや豚舌は、実は僕はあまり得意ではない部位でもある。
 ボイルした豚のホルモン系を食べさせる店が広島市内にいくつかあるけれど、そう
 いうところで食べると妙に臭いが気になるのだ。
 あまり旨いと感じないなと思っていたが「おっきん」で食べて旨かったし、ここで
 食べても旨いので見直した。そんなに旨味は濃くないがさっぱりして、さっくりし
 た身質が魅力。芯まで火を入れるのではなく、ギリギリ熱が入る程度で寸止めする
 ことが重要ではないか。豚だからレアという訳にいかないので、その辺りの加減が
 難しいところだ。
 
 一串の肉のボリュームが多めと書いたが、それは酒も同様。ビールはさすがに普通
 の量だが、日本酒や焼酎はちょっと驚くくらい大盛。これは「とくあん」の流儀に
 従ったものだという。確かに「とくあん」で焼酎なんか頼もうがものなら、一杯で
 クラクラになるくらいたっぷり入れてくれるもんな。そういう客本位なところが嬉
 しく、惹かれてやってくる客が多いようだ。とはいえ、交通の便が悪くはないけれ
 ど良くもないので、近所の人が主のようだけど。一人の若者が焼鶏に対する情熱だ
 けでやっているような店だし、まだまだ試行錯誤してもらいたい部分もたくさんあ
 るのだけれど、僕はこういう可能性が感じられる店が好きなのでついつい気になっ
 てしまう。レアな焼き加減が多いが、リクエストすればしっかり焼いてくれるので、
 焼鳥好きな人はぜひ一度訪れてみてほしい。 (07.01)

 再訪。ここは日曜日限定で生つくねを出している。他の日は茹でたつくねを焼くの
 で、触感が大きく違うのだ。今回の目的はその生つくね。団子状ではなく、棒状に
 焼かれているのは、焼いている途中に肉が割れないようにするためだろう。茹でた
 つくねはさっくりホロホロした触感が楽しいが、生つくねはねっとり締まった触感
 があり、ジューシーさが魅力。しかし、思ったよりも茹でつくねと生つくねの差は
 大きくなかったな。もっとぶっちぎりで生つくねのほうが旨いと思っていたのだが
 他には皮を食べた。僕はここの皮をタレで食べるのが旨いと思う。最近は塩で食べ
 させる店が多いけれど、タレにはタレの良さがあると思うな。ちなみに、つくねも
 タレで食べるほうが好みだ。もっとも、ここのタレはあまり甘くないため、僕の好
 みに合うというのもある。
 
 軽く食べて、〆は漬物を。きっちり乳酸発酵した本物の糠漬けで、口の中がさっぱ
 りするし、日本酒の肴にもなる。これほど旨い糠漬けを食べさせてくれる店はそう
 ないと思うのだが、調味料漬けの漬物モドキしか知らない若い人には不人気とのこ
 と。まぁ、仕方がないだろうな。本物を知らないのだから。相変わらず安くて旨い、
 得がたい店と思う。場所が場所だけに知らない人がほとんどだろうが、最近は結構、
 人気も出てきているように思う。僕もこういう店には頑張ってもらいたいなと思う
 のだ。 (07.08)

 再訪。皮は相変わらずタレが旨い。甘くないのがいいんだよね。それと親鶏を久々
 に食べると旨かった。以前よりも仕入先を換えたとのこと。徐々にではあるけれど
 進化しているなと思う。そういえば、豚足も始まっていたし。それと、初めて焼む
 すびを食べた。表面を煎餅のようにカリカリに焼き、焼鶏用とは違うタレを塗って
 仕上げる。もちろん、〆の一品として上々の旨さだが、これで酒も飲めてしまう、
 困ったご飯ものだ。 (07.09)

 再訪。隣の店との境をぶち抜き、広くなったのに合わせて少し値段が上がった。し
 かし、スタッフも増えたし、宴会もできるようになったので、普通の店らしくなっ
 たということだろう。店が広くなったのは良いが、値段が上がっただけというのは
 寂しいねと思っていたら、炭を備長炭に変えたと言う。「中国産ですけどね。へへ
 へ」と笑うが、いまどき国産の備長炭なんて、かなりの高級店じゃなければ使えな
 い。通常の焼き鳥であれば、中国産で充分である。
 
 で、違いがあるのかというと、これが大きく違うのである。焼き鳥の場合は炭の質
 って重要なんだなぁと再認識できた。具体的には表面が焦げないのに中までふっく
 ら焼けており、乾いた部分が少ない。以前はもう少し、焼けてもいるが、乾いても
 いるという部分が表面から数ミリまであった。それが少なくなったと思う。
 つまり、よりジューシーになったということだ。この店は強火で熱源に近づけて焼
 くため、焦げもあるのだが、その焦げも減った。
 全体的に良い方向で、僕は今回、親鶏、皮、つくね、この店では新作の砂ずりを食
 べたが、どれも旨くなっていた。あ、砂ずりだけはまだ改良の余地ありかな。
 独特の臭いが鼻に付いたのだ。
 
 それと、店を広げたときにハイボールを導入した。元祖ハイボールと、トロトロハ
 イボールの2種がある。元祖のほうが氷入りで、トロトロは氷なしだったかな。
 僕はいつもビールと日本酒なので正確に覚えていないけれど。そして何より、少し
 ずつだけど、慢心せず着実に前進している姿が好ましいなと思う。たぶん、僕はこ
 れからも焼き鳥店の中では最も足を運ぶ店になるのではないかと思う。 (08.07)