貴家【お好み焼き】

 広島市中区富士見町5-11 TEL:082-242-1717 11:30-15:00 17:00-23:30 火休

 そば肉玉700円、麺抜き550円、ハーフサイズそば肉玉500円、とくとく焼き1,000円、
 スペシャル1,000円、じぞう焼き1,050円、貴家。デラックス1,200円、
 瀬戸内焼き1,250円、マヨネーズ+30円、玉子W・紅生姜・ピリ辛+50円、
 餅・コーン・ニンニク・大葉+100円、野菜W・肉W・麺W・イカ天・キムチ・
 シーチキン・チーズ・観音ネギ+150円、生イカ・生海老+200円、ホタテ+300円、
 牡蠣+500円、焼そば650円、醤油焼そば650円、ピリ辛焼そば650円、塩焼そば650円

 地蔵通りの以前「藍」という店があった場所にできた店だ。僕は開店早々にも一度
 訪れたことがあるけれど、実に旨いお好み焼きを焼いていたので、再度、半年ほど
 期間を置いて訪れてみた。しかし、やはりお好み焼きの旨さは変わらず。むしろ、
 手際などは向上したように感じた。
 
 店主は「みっちゃん(総本店)」の出身なので、焼き方は概ね準じている。やや粘り
 気のある生地を薄く引き、鯖節、キャベツ、魚粉、天カス、モヤシ、豚バラ肉短め
 を3枚、ラードを一匙でひっくり返す。繋ぎの生地を使わないところが一つの特徴だ。
 麺は生麺を茹で、円盤状に整形したところへ、油を2種類加える。一つはラードだろ
 うが、もう一つは何か判らないので訊いてみると「ダシです」とのこと。
 何のダシかは秘密のようだが、僕は香味油かな?と感じた。ニンニクやネギなどの
 風味を付けた油のことだ。さらに、麺の上にガーリックパウダーを少量振り、片面
 だけをじっくり焼く。最初に生地を延ばす場所、野菜を蒸らす場所、麺を焼く場所
 については、鉄板の温度の関係で場所が決まっており、鉄板そのものはかなり高温。
 熱い鉄板が苦手な人は、メインの鉄板ではなく、食べるためだけに設えられた、細
 長いサブの鉄板があるので、そちらへ座ると良いだろう。
 
 野菜は最後まで押えず、むしろ膨らませるように、サイドから空気を入れて蒸らし、
 程よいところで麺と合体させる。麺は鉄板に触れていない側、つまり焼いていない側
 へ野菜を置くのが「みっちゃん(総本店)」の系列の流儀だ。
 合体させてからは軽くだけ押さえ、鉄板に玉子を割り落とし、潰して本体をのせ、
 完全に固まる一歩手前くらいでひっくり返す。頼めば半熟もやってくれるようだ。
 
 仕上げはソースを塗り、青海苔を少々振るのみ。ソース以外の味付けは、全てお好
 み焼きの内部で行い、外側はシンプルに仕上げる。食べると実にすっきりした味わ
 いで、キャベツの旨味がとてもよく出ている。いや、そもそもキャベツの質が他店
 に比しても高いと感じた。どこのキャベツかと尋ねると、今は鹿児島産とのこと。
 
 しかし、今の季節ではベストに近い選択でありつつも、店主にしてみれば70%のキャ
 ベツと言うではないか。100%のキャベツは?と訊くと、愛知県産だという。もちろ
 ん、愛知県産であれば何でも良いという訳ではなく、仕入先も決まっているらしい。
 僕は鹿児島のキャベツもジューシーで柔らかく、途中、差し水を行っていないのに、
 行ったかのように瑞々しいではないかと言うと、店主はもう少し固めな、焼いてホコ
 ホコ感が出るキャベツが好きなのだとのこと。なるほど。僕はジューシーなキャベツ
 って好きだからね。それにしても、その愛知県産はどんなものなのか食べてみたいも
 のだ。時期を訊くと、概ね3〜4月と10〜11月に入ることが多いとのこと。年によって
 出来不出来があるのが悩ましいようだが、それだけキャベツの質に心配りしていると
 は素晴らしい。
 
 そして、この店の場合、モヤシも旨かった。広島のモヤシはレベルが高いと言われる
 が、この店のモヤシはその中でも上等な部類だろう。食べ進むうちにキャベツの風味
 にほんのりとガーリックが香ったり、黄身のねっとりしたコクが感じられたり、揚げ
 麺のようなカリカリ感を楽しんだり、部位による細かな味の違いがあり、食べていて
 飽きさせない。お好み焼きのB級さ加減を残しつつ、旨い野菜をたっぷり食べられて
 満足という気分にもさせてくれる。
 
 最近は麺をカリカリに仕上げる店が増えていて、それは確かに旨いんだけれど、同時
 に油っぽさを感じさせるという欠点にもなる。この店の場合、その辺りの程が良いん
 だな。過度な特徴を狙うのではなく、良い素材を仕入れ、的確に狂いなく仕上げる腕
 を磨く。
 
 清潔感にも配慮が行き届いており、鉄板の上は常にピカピカだし、お金を触った後に
 はきちんと手を洗っていた。また、野菜屑の少なさが僕には嬉しい。僕の年代はまだ、
 もったいないという言葉を聞かされて育っているので、野菜を焦がしてどんどん捨て
 る焼き方は、見ていてストレスが溜まるのだ。お好み焼きの容積もその分小さくなる
 訳だし。この店の場合、良いキャベツ、つまり値も良いキャベツを使っているので、
 迂闊に焦がして捨てたくないというのもあるのだろうが。お好み焼き好きを自認する
 人ならば、一度暇な時間に訪れて、色々と話をしてみると楽しいだろう。お好み焼き
 の焼き方や材料について「理由は知らないけれど、そう習ったから」ではなく、なぜ
 この材料を使い、こう焼くのかという問いに、この店の店主ほど明確に答えてくれる
 人はほとんどいないのではないかと感じた。そういう店なのでサービスは良い。
 とはいえ、人情系の店にあるような、無料で大盛サービスとかいう意味でのサービス
 ではなく、社会人として丁寧に接し、水が切れたらすぐに注いでくれ、挨拶は明瞭で
 元気が良いなどの意味でのサービスだ。僕はそれに店内の清潔さも挙げておきたいな。

 広島県内はもとより、広島市内においても千軒を超えるお好み焼き店があるけれど、
 僕が知り得る中で、現在のところ、最も高い評価を付ける店の一つだ。
 また、本人は大変だろうが、店主が一人で焼いているため、味にブレがないというの
 も客にとっては喜ばしい。店主はなかなかに野心家のようだが、若くから小さくまと
 まろうとする人よりも、よっぽど今後に期待できると思う。(05.05)