近くて知らない町 「可部」

迷ってみましょう広島32

   このコーナーは、積極的に道に迷うコーナーです。

 今回は可部に行ってきました。広島市安佐南区可部。
可部を知っている人に聞きましょう。可部、と聞いて何を思い浮かべるでしょ
うか。僕が思い浮かべるのは可部線の可部駅での乗り換え(残念ながらもう無
いですけど)、191別れ近辺の渋滞、あとは高校生の時、可部高校に行った
なぁというぐらいしかなかったんですよ。

 ところが、ですよ。前回東城に行ってあのレトロな資料館でみせてもらった
郷土資料の最後の方に載っていた、民謡の歌詞ですよ。これが効きました。
地に付いた民謡の中に、その当時の様子を知る手がかりがあることがあるんで
す。その時の風俗や情勢を詩に織り込んで、おもしろおかしく時勢を皮肉るこ
とって、今でもよくありますよね。替え歌だとか、サラリーマン川柳だとか。
 その民謡の歌詞の中に、三次、吉田と並んで可部が出てくるのです。何で可
部?可部ってそんなにすげぇ町なん?
 三次は分かりますよ。中国山地の大都市ですから。石見銀山や出雲と広島と
を結ぶ重要交易地点です。吉田も分かりますよね。毛利氏の本拠地です。
そこに可部ですよ。なんで?なんであの可部が?いっつも渋滞なのに?渋滞は
関係ないか。
 考えても考えてもなんで可部なのか分からないので、とりあえず出かけてみ
ることにしました。今回は車で出かけました。電車に乗ればとりあえず駅に着
くので、そこである程度情報収集ができて、うまくいけば町歩きマップみたい
なのが手に入ったりするんですが、車の場合どこに行ったらいいでしょうか?
郷土資料館があれば一番ですが、無い場合は、ん〜やっぱ公民館かな?郷土研
究サークルの会報なんか見つかるとええんですが。ということで公民館を探し
ます。

 さて、国道54号を広島から北へ向かいます。山陽自動車道の広島インター
を過ぎたあたりはずいぶん前から工事してますが、いつになったら完成するん
かなぁ、なんて考えている内に徐々に車の流れが悪くなってきました。さあ、
らしくなってきましたよ。

 地図を見ながら公民館を探します。あっれ〜?地図にはこの辺って書いてあ
るんですが、どうもありそうにないですね。おかしいなぁ。通り過ぎたかのぅ。
左折を4回繰り返して再度チャレンジ。えーと、えーと、おかしいのぅ。無い
のぅ。あらっ、なんじゃこの地図、7年も前のじゃない。こりゃぁいけんわい、
きっとどこかに移転しとるに違いないです。
 車から降りて道行く人に尋ねてみると、公民館は大きなビルの6階に移転し
たとのこと。ははー、そりゃ分かりませんわ、納得。教えられたとおりのビル
にたどり着き階段を上がります。それにしてもなんですな、ここと同様にビル
の一部が公民館てところ他にも知ってますが、これって公民「館」なんですか
ね。個人的には違和感あるところです。
 それはさておき、公民館の中を見て回りましたら、地元を盛り上げる会の会
報が張り出してありました。いいですね、やってますね。ついでに散策用のマ
ップなんかも置いてあると助かるのですが、掲示板に貼ってるもの以外には見
あたりません。壁のマップを頭にたたき込んで、今回は手ぶらで歩くことにし
ました。

 地図によれば、公民館のある建物のすぐ裏手から旧街道が延びているはずで
す。ビルから出て裏に回ってみますと、突然瓦屋根と格子の町並みが広がって
おりました。これはびっくりしました。すぐ向こうの国道では今も車が渋滞し
ているというのに、この落ち着いたたたずまいはどうでしょう。空が広く見え
ています。
 と、いつもならここから散策が始まるのですが、今回はちょっと事情が違い
ました。どうもこの旧街道は、54号の渋滞をさけようとする車の抜け道にな
っているようで、次から次に車がやってきては、ぎりぎりですれ違っていくの
です。町並みを眺めながらのんびり歩こうと思っても、車がくるたびに道の脇
の方へどかなければならず、とても歩きにくいのです。ぐるっと見回してみて
も、この道を徒歩で利用している人がほとんど目に入ってこないのもそのため
でしょう。町並みは大変魅力的なのに、車の多さがその魅力をそいでしまって
いますね。

 あまりにも車の量が多いのでとても歩いておられず、大きなのれんの掛かっ
た、古民家を改装したカフェに入りました。店に入ってみるとそこは土間にな
っていて、可部の昔の写真が解説付きパネルにして飾ってありました。公民館
で見た掲示物に載っていたお店は、どうやらここのようです。ははぁ、かつて
可部が大きな街だったのは、太田川を使って船で物を運んでいたからのようで
す。帆をかけた船の写真が飾ってありますよ。解説文によりますと昔は広島か
らこの可部まで、帆掛け船でさかのぼれたそうです。今じゃちょっと想像でき
ませんね。
 山地からここ可部まで陸路で物を運んでくる。ここから水路で広島まで運ぶ。
広島からの物は可部まで船でやってきて、ここから陸路で運ばれる。なるほど。
人も物も集まる場所だったわけだ。

 なるほどと思ったところでコーヒーでもと思ったのですが、どう見てもこの
部屋はカフェではないですね。ただの土間です。おかしいなぁと思っていたら
奥の方に人の気配がします。奥を覗きこみながら「すいませ〜ん、コーヒー飲
みたいんですが〜。」「あ、どうぞ〜こちらですよ〜。」
 言われるままに細い廊下を奥に進むと、天井が高く庭からの明かりがほんの
り暖かい空間がぽっと開けました。「いらっしゃいませ。」おもしろい構造で
すね。民家を改装したからこんな変わったお店になってるんでしょうけど、な
んだか隠れ家のようで楽しいですね。

 庭を眺めながらぼや〜っとコーヒーを飲んだ後、再び町へ出て、今度は街道
ではなく裏道をあちらこちらへと歩いてみました。そのうち、「花街道」と名
付けられた散策ルートを見つけました。所々に矢印付きの看板が出ています。
そのルートに面したお宅の前にはいくつもプランターが置いてあり、それぞれ
に小さな花が植わっていました。
 花や植物のある狭い路地を歩くのは、なんだか心がほっとしていいですね。
潤いがあるという言葉のほうがぴったりくるかな。しっとりした空気が心地良
いです。

 かつて唄にもうたわれた「可部」は、あの旧街道を中心とした町のことでし
ょうね。町並みもきれいに残っているし、過疎化が進んでいるという風でもな
いので、もっとたくさんの人が訪れる町であってもいいように思いますが、や
はりネックは旧道の交通量でしょう。都市部にも近いし、もっとたくさん個性
的なお店が増えたり、散策の資料が充実してくれば、ずっと面白くなると思う
んですが。

 がんばっておられる方々のホームページを見つけましたので紹介しておきま
しょう。

可部カラスの会
http://www.megaegg.ne.jp/~kabekarasu/

さて次はどこの街に行きますかな。
太田川を遡って二重焼きを食べに行こうかな。
                             by 自転車