達磨(だるま)

http://hamanet.jp/kaishoku/detail.aspx?txtKshopcd=1206&mode=1&Kj=18&Ka=34369

 一部の人たちには「ゴットハンド」と呼ばれる、日本有数の蕎麦職人、元信州「翁」
 の高橋邦弘さんの店だ。
 
 恒常的なオープンは10年先と言われているが、現在でも、月に1~2回(主に週末)、
 試験的に開いていることがある。本来的な意味での営業はしておらず、高橋さんが
 いるときにちょこちょこ開くだけなので、わざわざ出かけるならば必ず開店日を確
 認して訪れよう。
 
 僕は「8名以上(15名くらいまで)ならば予約できる」とのことだったので、同好の士
 (快食オフML)と共に訪れた。ただし、建物は豊平町のメインストリートからは大き
 く外れており、しっかりと場所を確認しておかなければ絶対に迷う。
 県道301号線の長笹入口バス停の周りに「達磨」の看板が立っているので、それを
 最初の目印にして後は看板に従って進めば良い。雪が降ったらノーマルタイヤでは
 無理に登れないだろうと思うような、舗装されていない道を進んでゆくと、忽然と
 店が現れる。
 
 一見、ちょっとした美術館のようだ。初めて訪れたら、感動するほどの異世界ぶり
 なので、看板は出ていないけれどそこが目指す「達磨・雪花山房」だということは、
 すぐに判るだろう。ちなみに「達磨」というのが屋号で「雪花山房」というのが
 建物の名前である。自宅は「しんこんけん(新坤乾?)」と言うらしい。
 
 僕たちは、料理を2,000円分ほど用意してもらい、それを肴に酒を飲み、〆に蕎麦を
 食べた。料理は、蕎麦味噌、胡麻豆腐、鴨肉、ダシ巻き玉子。蕎麦味噌は鮮やかな
 緑色をした蕎麦の実が入っており、味噌の味がそれほど強くない上品なもの。これ
 ならもっとたくさん食べたいと思わせる蕎麦味噌だった。胡麻豆腐は「これは朝作っ
 たんだよ」と高橋さんが言う通り、できたてならではの強烈なネットリ感とコクが
 あった。これは胡麻もだけど、葛がいいんだろうな。味付けは甘みのないポン酢と
 ワサビ。鴨は茨城県産の平飼いの鴨肉に塩をして、60度前後でじっくりと熱を通し
 たものだとか。鴨の味が深く、身の味も脂の味も力強かった。
 ダシ巻き玉子はもっと醤油の味が強いものかと思っていたが、ダシの味が強い関西
 スタイルのダシ巻きだった。僕はもっと蕎麦店らしい玉子焼きを期待していただけ
 に、旨かったんだけど、もう一つだった。
 
 肝心の蕎麦は茨城県産の蕎麦を中心にブレンドされたもの。高橋さんの蕎麦はいつ
 も二八なので、今回もそうだった。蕎麦の産地は常に最善のものを選ぶという判断
 からか、決まった産地の蕎麦を使うということはないようだ。当然、蕎麦粉が変わ
 れば味も変わる。
 今回の蕎麦は保存が大変良いとのことで、鮮やかな緑色をしていた。一枚目、やや
 もそもそ感があり、喉に落ちてゆくときにもぼんやりした感があった。
 もちろん凡百の蕎麦とは比べられないほどだけど、ややイマイチ感があった。続い
 て二枚目を食べると、今度は強烈に旨い。コシがコリア料理の冷麺的なコシで、も
 ちろんあれほど強くはないけれど、ゴムのように押し返す、弾力のあるコシだった。
 そして、それを噛み締めると、若々しい蕎麦の香りと甘みがたっぷりと出てきた。
 嚥下すると、あれだけコシの強かった蕎麦なのに、まったく喉太さを感じさせない。
 表面のわずかな粘りが潤滑油になってするすると胃に落ちてゆく。僕は生粉打ちが
 好きだけど、こういう蕎麦を食べてしまうと「単に固かっただけかも?」と考えて
 しまった。蕎麦の実が持つ水分をしっかり含ませたまま水回しし、乾かないように
 延ばして切り、適切に湯がかれた蕎麦はこれほどまでに瑞々しいのだ。
 
 結局、僕は四枚も食べてしまった。そう。高橋さんの蕎麦の特徴は、食味が軽いこ
 と。蕎麦そのものに水分がしっかり含まれているので、胃の中で膨らまないのか?
 それとも、消化に良いのか?旨いから軽く感じられたのかは不明。ダシは醤油の辛
 さが前面に出るのではなく、ダシがしっかり感じられる辛口だった。薬味はワサビ、
 辛味大根、白ネギ。僕的には辛味大根が好きだな。ワサビはときどき舐めつつ、
 口直しに。蕎麦を食べたら、蕎麦湯が出てくるので、それも堪能しよう。
 
 「達磨」というのは高橋さんの子供の頃のあだ名らしいが、蕎麦湯は達磨を象った
 漆器に入って出てくる。サービスは非常に良いし、高橋さん自ら店に出てくるので、
 混んでなければ直接話をすることができる。高橋さんは話をすると気さくな人で、
 素人のベタな質問にも丁寧に答えてくれる。
 ゆったりとした静謐な場所で、滋味深い蕎麦を手繰るというのは実に楽しい、大人
 の時間だ。当然、店内禁煙なので、蕎麦を食べるときくらい煙草は控えてもらいた
 い。(02.02)