風呂屋行こう

迷ってみましょう広島8

   このコーナーは、積極的に道に迷うコーナーです。

  そうだ、風呂屋行こう。
  某鉄道会社CMのパクリです。しかし、そういう気分になってしまったんだ
 から、仕方無いのです。いきなり風呂屋に行きたくなりました。風呂屋といっ
 ても、今はやりのスーパー銭湯でもなければ、温泉でもなく、ましてや薬研堀
 あたりのお姉さんの居る風呂屋でもありません。いわゆるフツーの風呂屋。住
 宅街の中にあって、煙突が立っていて、昼過ぎあたりからじーさんがいっぱい
 居るような、そんなお風呂屋さんのことです。
  実を言うと、我が家のすぐ近くにも、お風呂屋さんが1件あるのです。しか
 し、そこへ行くのではあまり面白くない。どこかへちょっと出掛けて、そこに
 あるお風呂屋さんに入るというのが面白い。んー、どこかいい所がないだろう
 か・・・。そういえば横川の友達の家の近くに「ゆ」の看板が出てたなぁ。
 よし、今日は横川だ!

  ということで横川駅に降り立ちました。時刻は午後4時半。駅のホームは帰
 宅途中の高校生でいっぱいです。ふっふっふ、まさか俺が今からお風呂に入ろ
 うとしているなどとは、思いもよるまい。むっふっふ高校生め。なめんなよ。
  目指すお風呂屋さんは駅よりも北側にあるのですが、北口から出るとお店が
 少なくてあまり面白くないので、わざと南口から出て、商店街を抜けて駅の北
 へ行くことにします。商店街の中には、いかにも夕暮れ時らしいにぎわいがあ
 りました。さすが横川だなぁ。いい感じ。

  JRのガードをくぐり、金物屋の前を過ぎて、ぼちぼち店じまいをしている
 八百屋の角を右に折れ、お寺の角を左に曲がると、暮れかけた町の景色の中に
 「ゆ」の灯りが見えました。夕暮れと風呂屋ってよく合いますね。

  純和風な前庭を抜けると、表からは全く見えない場所に入口がありました。
 扉を開けると番台にはおばちゃん。「なんぼですかー。」「350円。」お金
 を渡し、下駄箱に靴を入れ、木で出来たロッカーに脱いだ服を入れます。風呂
 から上がった爺さんと番台のおばちゃんが濃い広島弁で世間話をする声が、脱
 衣場に響いています。その声を背に受けながら、浴室の引き戸を開けました。

  微かにツンと消毒のにおい。古いけれど清潔な浴室。風呂屋にしては少し小
 さめな浴槽では、先客の爺さんが一人、静かにくつろいでいるところでした。
 引き戸の横に積んである椅子と洗面器を一つずつ取り、端から2番目の蛇口の
 前に座ります。蛇口は一人にふたつ。赤いレバーが付いているのがお湯、青い
 レバーの方は水。使い込まれた蛇口です。顔を上げると、鏡にはパーマ屋の広
 告。「紳士パンチパーマ」の文字が時代を感じさせます。おもむろに赤いレバ
 ーを倒すと、勢いよく冷水が出ました。おそらく今日この蛇口を使うのは僕が
 最初なのでしょう。静かな浴室に水音が響きます。
  ちょうどいいお湯が出始め、体を一通り洗い終わった頃には、もう浴室は僕
 だけになっていました。さっきまでくつろいでいた爺さんは、もう脱衣場でタ
 オルをパシパシいわせながら体を拭いているところでした。
  さあ、350円で得られる至福の時間の始まり始まり。ゆっくりと浴槽に足
 を入れてみます。あち〜っ、熱いよ!流行りのスーパー銭湯ではあり得ない温
 度です。いや、でもやっぱり風呂はこのくらいじゃないとね。風呂屋に来たっ
 て感じがしないもんね。
  ゆっくりと足を伸ばします。ふぅ〜、極楽、極楽。立ち昇る湯気とともに天
 井を見上げていると、顔中から汗がぽろぽろとこぼれ落ちていくのが分かりま
 す。やっぱいいわぁ、風呂屋のお風呂。
  しかしなんですね、こうやってお風呂屋さんで湯につかってのんびりしてい 
 ると、住んだこともないよその町が、なぜかとても身近に感じられるから不思
 議です。まるでもう何十年もその町で暮らしているかのようです。風呂屋巡り
 でも始めてみようかなぁ。
 
  風呂屋から出ても、外はまだ夕方でした。冬の冷たい風が、上気した頬に気
 持ちよいです。さあ、これからちょっと一杯飲みに行きましょうかね。なんた
 ってここは横川なんですから。

 付け加え:そういえば最近スーパー銭湯とかで、年齢に関係なく、全然入浴マ
 ナーのなってない人をたくさん見かけます。体を洗うときは周りの人にしぶき
 がかからない様気を付ける、使った椅子や洗面器は元あった場所に戻す、雫を
 ぽたぽた落とさないように体は一旦拭いてから脱衣場に戻る、など、他の人も
 気持ちよく利用できるよう心がけましょうね。

 金星湯 TEL:082-237-0711 広島県広島市西区三篠町2丁目12−10

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